大量人骨のなぞ明らかに? 鳥取・青谷上寺地遺跡で本格調査

大久保直樹
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 「魏志倭人伝」で「倭国乱れ、相攻伐すること歴年」と記された2世紀後半、殺傷痕のある骨も含め、大量の人骨が溝に散乱していたのはなぜか。集落で一体何があったのか。弥生時代最大級の集落跡がある国史跡・青谷上寺地(あおやかみじち)遺跡(鳥取市青谷町)の調査で、謎だった当時の集落の姿や、人々の暮らしぶりの一端が明らかになるかもしれない。

 今回の第20次調査は今年度から3カ年の計画だ。発掘場所は2000年に人骨が大量に出土した「SD38」と呼ばれる溝に近接する225平方メートルの区画。今年度は予備調査で、縦22メートル、幅27メートルを機械で掘削後、深さ約3メートルまで慎重に掘り下げ、「SD38」の延長線上も含めて調査した。

 遺跡の発掘方針を協議する「とっとり弥生の王国調査整備活用委員会」の調査研究部会(座長・木下尚子熊本大学名誉教授)が11月18日、同市青谷町であった。予備調査で人骨の一部が出土したことが報告され、来年度の本格的な発掘調査の方針を確認した。

 遺跡は地下水が豊かで、木製品から脳が残った頭蓋骨(ずがいこつ)まで多彩な遺物が良好な保存状態で出土することから、「地下の弥生博物館」とも称されてきた。

 予備調査では、さまざまな時代の遺物が見つかった。前頭骨や頸椎(けいつい)など人骨の一部のほか、シカやマグロの骨、骨角器、勾玉(まがたま)、土器、矢じりの「銅鏃(どうぞく)」、薄板を人の形に切り抜いた祭祀(さいし)具「人形(ひとがた)」、宋銭などが確認された。

 人骨は後世の土地利用で掘り返されて新しい地層に表出したとみられ、さらに下層の弥生時代後期の地層に人骨が眠っている可能性が高いという。

 研究部会ではトレンチ(試掘溝)の場所や調査区域拡張の必要性を協議した。来年度は5月から半年間かけて、「SD38」の延長線部分を掘削する。出土した人骨や木製品はその都度、3Dレーザー測量でデータを採取。24年度に調査成果の整理や検討、木製品の保存処理などを行う。

 今回の調査に合わせ、頭蓋骨などの人骨が大量に出土した2000年当時の発掘成果や出土状況なども再検討。人骨がどんな状態で埋まっていたのかを詳しく調べ、集落の姿や謎の解明に迫る。

 木下座長は「ここは普通の『墓』ではなく、何が起こったのかこれまでの研究も再検討する。これから分かってくることがたくさんある」と期待を寄せた。

 遺跡を巡っては、頭蓋骨などから顔を復元した「青谷上寺朗」や全国公募したそっくりさんが大きな話題を呼んだ。来秋には遺跡の一部が「青谷かみじち史跡公園」としてオープン。遺跡への関心や盛り上げる機運が高まりつつある。

 県とっとり弥生の王国推進課の浜田竜彦課長補佐は、「今後、さらに人骨が見つかる可能性が高い。遺跡に関心のなかった方にも興味を持ってもらい、史跡公園に来て頂けるよう新しい情報を発信したい」と意気込んでいる。(大久保直樹)

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