山口県の赤字線、コロナで収支悪化 JR西が19~21年度分を公表

大藤道矢 大室一也
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 JR西日本は利用者の少ないローカル線の2019~21年度平均の収支状況を11月30日に公表した。山口県内の5路線6区間が含まれ、すべて赤字だった。新型コロナウイルスの影響が本格化する前の17~19年度平均と比べ、収支率がいずれも悪化している。

 JR西は今年4月、1キロ当たりの1日平均利用者数が2千人未満の区間の収支(17~19年度など)を初めて公表した。バスへの転換など沿線自治体との議論を加速させるねらいがある。発表は2度目で、19~21年度平均の収支が示された。17路線30区間のすべてが赤字。17~19年度と比べ、費用に対する収入の割合を示す収支率は28区間で悪化し、赤字額は16区間で拡大した。コロナ下での利用低下が響き、厳しい運営が続いている。

 県内で赤字が最も多いのは山陰線の益田―長門市の12億4千万円。同線の長門市―小串・仙崎は9億円で、17~19年度と比べて赤字額が減った。山口線の宮野―津和野の収支率は10・5%で、17~19年度の17・7%から大きく落ち込んだ。

 100円の収入を得るためにかかる経費を示す営業係数は、益田―長門市が1923円、長門市―小串・仙崎が1491円だった。

 発表の対象とされた各線についてJR西は「大量輸送という鉄道の特性が十分に発揮できないと考えている。地域の町づくりに合わせ、今より利用しやすい最適な地域交通体系を皆さまと作り上げていく必要がある」と話す。

利用促進へアイデア絞る

 収支公表の対象になった路線の沿線自治体は、廃線への流れを食い止めようと利用促進に力を入れる。美祢、山陽小野田、長門の沿線3市などが設置する「JR美祢線利用促進協議会」は、美祢線が再来年に全線開通100周年を迎えることを契機として、沿線外からも人を呼び込むイベントを催している。

 旅行会社と企画した11月5日の日帰りツアー「お笑い列車in美祢線」は盛況で、2両編成の列車が満席になった。参加者は、お笑い芸人と厚狭駅から列車に乗り、長門湯本駅で降りて温泉旅館で昼食やお笑いショーを楽しんだ。

 東京都世田谷区の会社員の女性(22)は、ルームシェアする女性(25)、その母親(50)と参加した。3人とも山口県に来たのは初めて。地方を旅するのが好きだという女性は、通過駅で住民から手を振られ、「地元の人が温かい。空気感がいい」と喜んでいた。

 さらなる需要を掘り起こそうと、協議会は来年1月19、20の両日、特別列車「長門湯本温泉うたあかり号」を運行する。新山口駅を出発し、厚狭駅を経て仙崎駅へ。金子みすゞ記念館などに立ち寄り、長門湯本駅が終点。各自で1泊し、帰路はバスで別府弁天池や秋吉台などを回った後、美祢駅から厚狭駅に戻る予定だ。近く参加者の募集を始める。

 協議会事務局を務める美祢市地域振興課の担当者は、今回のJR西の発表について「現実を真摯(しんし)に受け止め、今以上に利用促進を図っていきたい」と話した。

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