図書館司書、手取り月9万8千円 「待遇変えたい」声あげる女性たち

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宮田裕介

 先代の知恵を次世代に継ぎ、新しい世界との出会いの場でもある図書館。その場所を支える職員の多くが、非正規で待遇が良くないことを知っていますか。いま、ある司書の「叫び」が注目を集めています。(宮田裕介)

 「手取り9万8千円で働く非正規図書館員です。図書館の今を知り、未来のために署名をいただけませんか?」

 オンライン署名サイト「Change.org(チェンジ・ドット・オーグ)」で8月、雇用年限の撤廃や最低賃金の引き上げなどを求める署名が始まった。呼びかけ人は中部地方の20代の女性司書。1日7時間、月18日ほど働き、年収は150万円程度という。

 「一人暮らしはとてもできません。実家で細々と暮らしています」「服はシーズンに1着。お金が無いので弁当を持って行って、外でジュースなんて飲みません」と訴える。

 11月までに7万人以上の署名が集まり、関係者らが7日、要望書と共に文部科学省や総務省に提出した。

「仕事は好き、だけど一人で暮らせない」

 東京都内の公立図書館に務める司書の50代女性は、署名提出の場に駆けつけた。「一生懸命働いても、自立すら難しい状態を何とかしたい。いい仕事をするには、安心して働ける職場でないと」

 この女性は週4回、1日7時間45分働き、月収は手取り18万円程度。低賃金の背景には、「家庭内で男性が稼ぎ、女性は扶養家族になるという前提があるのでは?」と感じてきた。文科省の調査によると、4万3865人の図書館員のうち、約8割が女性。さらにそのうち約8割が非常勤もしくは指定管理者の職員だ。「国は同一労働同一賃金、男女間賃金格差解消を掲げている。仕事にふさわしい賃金と待遇の改善を求めたい」と話す。

 署名に賛同した東京都の司書の40代女性は、職場を去った同僚たちの言葉を思い出した。「司書の仕事は好きだけど、この給料では一人で生きていけない」「家族を養える仕事に就かなきゃ」と話していた。

 女性自身、求人募集を毎日眺め、転職を考えたこともあった。「図書館への情熱や愛情があっても、生活は苦しい。どうか、安心して働かせてほしい」

 文科省によると、司書の数などは把握しているが、賃金や待遇は調べていない。学校司書の中には複数校兼務している人もいる。要望を受け、待遇面を含めた調査ができるか検討するという。

新制度、待遇改善のはずが 逆行する動きも

 非正規公務員問題に詳しい立…

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この記事を書いた人
宮田裕介
文化部|メディア担当
専門・関心分野
メディア、放送行政、NHK