第9回敵基地攻撃 なぜ、敵の「攻撃着手」が重要なのか? どう認定する?

有料記事安保の行方を考える

田嶋慶彦
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 年末の安全保障関連3文書の改定をめぐり、政府は相手のミサイル基地などをたたく「敵基地攻撃能力」の保有に向けた議論を進めている。

 日本の防衛政策は「相手から武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限る」という「専守防衛」。敵基地攻撃能力の保有に踏み切れば、日本の安全保障政策の一大転換となる。

 与党協議では、敵基地攻撃が国際法で禁じられている「先制攻撃」に当たらないよう、敵が攻撃に「着手」したことをどう認定するかが論点となっている。

 敵基地攻撃能力の保有にあたり、着手の認定は可能なのか。問題点はないのか。国際法が専門の松井芳郎・名古屋大名誉教授に聞いた。

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 岸田政権は年内に外交・防衛政策の基本方針「国家安全保障戦略」など三つの文書を改定します。今回の改定は日本の安全保障の大転換になるかもしれません。改定に関わる関係者、有識者に様々な視点から聞きました。

 ――今年3月の参院予算委員会公聴会に出席し、「敵基地攻撃能力を持つと、ウクライナ戦争のロシアと同じ立場に立つ危険がある」と発言しました。どういうことでしょうか。

 「敵基地攻撃の法的根拠は自衛権であり、発動のための主な要件は、『相手国から武力攻撃が発生したこと』です。国連の基本文書である国連憲章に書いてあります。自衛権を発動する国は、武力攻撃が発生したことを証明しなければいけません」

 「ロシアの場合、プーチン大統領は『侵略に対する先制的打撃だ』などと言っていますが、ウクライナから武力攻撃があったとは言っていません。つまり、ロシアは武力攻撃発生の挙証責任を果たさなかったのです。日本が敵基地攻撃をした際、相手からの武力攻撃を証明できなければ、日本が侵略者になってしまうことになります。その危険を十分認識しておく必要があるということです」

 ――公聴会では、「武力攻撃…

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