ことでん伏石駅、本格開業から1年 新駅でバス路線再編の成果は

福家司
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 【香川】高松琴平電気鉄道(ことでん)琴平線の伏石駅(高松市太田下町)が今月、本格開業から1年を迎えた。鉄道を基軸にバス路線を再編し、公共交通ネットワークの再構築を目指す全国でも珍しい市の構想に基づく新駅だが、コロナ禍で公共交通が苦戦する中、成果はまだら模様だ。

 平日の午前8時。駅前のバス乗り場には、電車が到着するたび乗客の列が延び、最終的には30人を超えた。乗客らは到着したバスに乗り込み、沿線にある職場や学校に向かった。電車とバスを乗り継いで通勤しているという高松桜井高の職員の女性は「駅とバス停が近く、乗り換えはすごくスムーズです」と話した。

 伏石駅は、国道11号バイパスをまたぐ高架駅で、2020年11月に開業した。昨年11月にはバスターミナルがオープンし、高速バスの徳島線と、太田駅から発着地が変更されたサンメッセ線など路線バス2路線の乗り入れが始まった。さらに今年4月からは、瓦町駅から発着地を変更した高松西高線など2路線の乗り入れが追加された。

 ことでんによると、21年度の伏石駅の乗降客は1日平均1420人で、20年度より398人増えた。両隣の三条、太田両駅はそれぞれ153人、188人減少しており、利便性の高い伏石駅に移ったとみられる。3駅合わせた乗降客は差し引き57人増えた計算だ。

 ただ、ことでんの藤本重信・運輸サービス部長は「コロナの感染状況を考えると、増加した乗客のどの程度が新駅の効果かは、はっきりしない」と慎重だ。

 路線バスはどうか。ことでんバスによると、高松西高線は乗り入れ前より若干乗客が増えた。高松西高のバス通学の生徒は今年度13人増えて23人になった。琴平線の一宮駅から電車とバスを乗り継いで通学する女子生徒は「このバス路線ができたことも、学校選びの理由の一つになりました」という。

 路線バスの利用者はコロナ前の70~80%にとどまり、乗り入れの効果の見極めは難しいというが、同社にとって明るい材料だ。担当者は「今後も新たな路線の再編や伏石駅への乗り入れは続ける方向だ」と話す。

 ただ、高速バスについては、徳島線の利用は低迷し、期待された関西方面など新路線の乗り入れについてもめどが立っていない。

 高松市は「コンパクト・プラス・ネットワーク」として、郊外と中心部を結ぶバス路線を、鉄道を基軸にフィーダー(支線)化して再編し、持続可能な公共交通ネットワークを目指している。伏石駅の整備はそのモデルケースと位置づけており、バスターミナルを含む駅前広場は市が整備し、駅舎の整備費も国、県、市が負担した。

 市交通政策課の西吉隆典課長は「鉄道とバスの結節点となる伏石駅の開業で、市の構想は1歩前進した」と評価しつつも、「利用促進策を実施し、コロナ禍で車や自転車、バイクに移った乗客にもう一度公共交通機関の利用を呼びかけたい」と話す。高速バス各社にも引き続き乗り入れを求めていくという。

 市はことでん琴平線の太田―仏生山間に新駅を設置し、結節点とする構想を持ち、JR予讃線の端岡駅も新たな結節点として整備する方針だ。西吉課長は「ことでんの新駅は、当初計画の23年度は無理だが、粛々と進めたい。端岡駅については、JRの経営状況もあるので、JRと協議している」と話している。

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