「あと18回行きたい」 小児がんの少女が夢中になった命輝く場所
娘に治療の効果が出ていないとわかったのは2019年の秋。娘が小児がんの一種、神経芽腫に侵されていることが判明して、わずか半年のことだった。
母親の梶原真澄さん(43)は、一人娘の恵麻さんの命が長くないことを受け入れるほかなかった。
ならば残された時間は娘がやりたいことをやらせてあげたい。
そう考え、病院以外の場所を探し始めた。
すると「横浜市に『こどもホスピス』ができるらしい」という情報にたどりついた。
その「ホスピス」は終末期医療の施設ではなく、病と闘う子どもたちが子どもらしく過ごすための場所らしい――。
「いつから利用できるのですか」
待ちきれず、問い合わせのメールを送った。
悲願だった「こどもホスピス」の誕生
昨年11月21日。横浜市金沢区の平潟湾のすぐそばに、こどもホスピス「うみとそらのおうち(うみそら)」がオープンした。
施設は2階建てで、1階は子どもと家族のふれ合いの場、2階は宿泊できる個室3部屋と、海や川を見渡せる大型の風呂、家族のためのサウナつきリフレッシュルームもある。
運営するのは認定NPO法人「横浜こどもホスピスプロジェクト」だ。
代表理事を務める田川尚登さん(65)は1998年に6歳だった次女のはるかさんを小児脳幹部グリオーマで亡くし、2003年から病気の子どもやその家族を支援する活動を続けてきた。
「うみそら」は、田川さんの悲願でもあった。
「はるかは病気を宣告された段階で余命半年と言われました。残された時間、はるかのやりたいことをさせてあげようと頑張りました。それでも後悔は残った」
小児がんなど重い病気にかかった子どもは、治療中心の生活になりがちだ。
病児としてではなく、一人の子どもとして
はるかさんも大好きだった幼稚園に通えなくなった。
園の先生が友だちが手作りし…