27年ぶりの運賃値上げ、なぜ? JR四国・四之宮専務に聞く
JR四国は2021年度の線区別収支を今月発表し、全8路線18区間のすべてが2年連続で赤字だったと明らかにした。経営状況の深刻さが増す中、来年春には管内全域を対象に平均で約13%の運賃・料金値上げを実施する予定だ。四之宮和幸・代表取締役専務・総合企画本部長に、利用者の視点から値上げの理由について聞いた。
――国に認められれば、消費税の転嫁を除いて27年ぶりの値上げとなります。
運輸収入で総費用をまかなう独立採算が求められる当社では、収入を少しでも増やさなくてはならず、利用者にもご負担をお願いすることになった。21年度も全線区で営業損失(赤字)となったが、特に本四備讃線(児島―宇多津間)の利用者がコロナが直撃する前の19年度の54・7%にとどまるなど、収入の柱だった都市間移動の回復が遅れていることを懸念している。
――近距離の運賃引き上げ率が高くなっているのはなぜですか。
近距離利用が多い都市圏では、朝夕のラッシュ時に合わせて列車の増便や車両の増結を行っており、相応に人的、物的コストがかかっている。(毎時決まった間隔で運転する)パターンダイヤの導入などのサービスの向上にも努めてきた。公平性を図るうえで近距離中心の値上げを考えた。
――通勤定期とともに通学定期の割引率を低くし、利用者の負担が増えます。
通学定期の利用者の割合は40%を占めるが、収入に占める割合は10%にとどまる。JR各社も同様だが、通学定期(大学生)の1カ月の割引率は70%と極めて高く設定されている。利用の少ない線区でも通学定期の利用者が中心で、持続可能性の点からも、ご負担をお願いしたい。通学定期の利用者に対する国や地方自治体の助成にも期待する。
――特急料金も、割引率が高い企画きっぷ「Sきっぷ」の値上げを予定しています。
定期券も含め、割引は基本的に縮小する方向だ。近年、多くの特急列車に新型車両を導入し、無料Wi―Fiやコンセントの設置、トイレの改装など快適性を高める投資を行っており、相応のご負担をお願いしたい。今後も特急列車の快適性、利便性を高めたい。
――一方で、値上げ後の運賃は、高松琴平電気鉄道、伊予鉄道、土佐くろしお鉄道といった四国の地方鉄道より低い水準です。
法令上は、年平均34億円分の値上げも可能だったが、大幅な値上げは利用者への影響が大きく、客離れを招き、当社の競争力が低下してしまう。今回の値上げ後も、なお年間15億円の赤字が残る予想だ。
四国では当社だけでなく公共交通機関はどこも苦しい。「いかにして地域の足を確保していくか」が最も重要で、競争より協調が必要なこともある。
――さらなる運賃、料金の引き上げはないのでしょうか。
今回の運賃改定は、燃料費など最近の物価の高騰を反映していない。今回の改定の効果や、電気や軽油などの高騰に対する国の補助の動向なども見極めながら、改めて検討したい…