静岡県内の私鉄、来春相次ぎ値上げ 人口減・コロナ、経営に影響
静岡県内の私鉄で、来年春の運賃値上げを国土交通省に申請する動きが相次いでいる。消費増税を除けば26~27年ぶりに値上げをする鉄道もある。新型コロナウイルスの感染拡大で企業のリモートワークが定着するなどして利用者が減り、鉄道会社の経営に大きな影響を与えている。
静岡市内の新静岡―新清水間(11・0キロ)の路線を経営する静岡鉄道(本社・静岡市)。来年4月1日から、初乗り運賃を140円から160円に変更するなど全区間で一律20円を上乗せする。通学定期は据え置く一方、通勤定期は17・6%値上げする。定期も含めた値上げ率は12・0%になる。静岡鉄道は2019年10月の消費増税の際、増税分を上回る形で運賃改定をしており、3年6カ月ぶりの値上げとなる。
静岡鉄道によると、鉄道部門は06年度から営業損失が続いており、21年度は約1億4千万円の赤字。新型コロナで利用者数の減少を招き、今後もコロナ禍前の水準まで需要は戻らないと想定しているという。
静岡鉄道の担当者は「今後も車両の更新や駅のバリアフリー化推進など、利便性や快適性の向上に取り組む。安全で安定した輸送を維持するために運賃改定を申請した」と説明する。
伊豆箱根鉄道(本社・三島市)も来年4月1日に、三島市と伊豆市を結ぶ駿豆線(三島―修善寺間、19・8キロ)で値上げをする。0~8キロ区間は一律20円を、8・1~20キロ区間は一律30円を加算する。定期も含めた値上げ率は14・5%。値上げをするのは、消費増税以外では1995年10月以来、27年6カ月ぶりとなる。
同社によると、沿線の人口減少で90年代前半をピークに輸送人員が減少しているうえ、企業のリモートワークや学校のオンライン授業など新型コロナによる新たな生活様式の影響を受けているという。
伊豆半島の観光路線、伊東―伊豆急下田間(45・7キロ)を経営する伊豆急行(本社・伊東市)は来年3月に、消費増税を除けば26年ぶりに値上げをする。普通旅客運賃と定期は15キロ以上の区間が上がり、値上げ率は2・2%になる。特急料金とグリーン料金は平均で15%の値上げとなる。
新型コロナの影響に加え、エネルギー価格の高騰に伴う経費増は当面続く見通しで、同社は「合理化や人件費の抑制といった経営努力だけでは賄いきれない状況」と説明している。
県内ではほかに、遠州鉄道(本社・浜松市)が「鉄道輸送の安全確保と利便性向上、経営健全化を図るため」として、今年2月に3・9%の値上げをしている。