原告女性が意見陳述「これから先のことも考えられない」

笠井哲也
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 東京電力福島第一原発事故の影響で甲状腺がんになったとして、事故当時に福島県に住んでいた17~28歳の男女7人が、東電に計約7億円の損害賠償を求めた訴訟の第3回口頭弁論が9日、東京地裁であった。原告は意見陳述で「これから先のことも考えられない」と将来への不安を訴えた。

 意見陳述をしたのは事故当時、中学1年生で中通りに住んでいた20代の女性。県の県民健康調査でがんが見つかり、2度の手術を受けてリンパを大きく切除したという。2回目の手術後は、耳の下まであった傷口がなかなかふさがらず、退院後に「首から体液が流れてきた時は焦りました」などと体験談を語った。

 最近、がんが再発し、3回目の手術の話もあるという女性。将来に不安を抱えて「今とか、未来とか、実際、やばい」と赤裸々に語る一方、「病気になったのが身内や友達ではなく、自分でよかったと思っています」と述べた。

 県内では原発事故後、300人超が甲状腺がんかその疑いがあると診断された。女性は裁判官に「不安に思う人が300人以上いて、その家族たちも不安に思っていることを伝えたい。今の状況が少しでも変わればと思っています」と訴えた。

 この日は、東電側の主張に対する原告側の反論や意見陳述が中心だった。東電側が原告らの被曝(ひばく)放射線量は100ミリシーベルト以下と低く、甲状腺がんの発症リスクは増えないと主張したことに対し、原告側は海外論文を引き合いに「100ミリシーベルトを大幅に下回ってもリスクはある」と指摘した。

 原告側はまた、県の県民健康調査のデータなどを用いた専門家による疫学調査では、原告の甲状腺がんを被曝(ひばく)に起因するがんと見なせる「原因確率」が94・9~99・3%と、極めて高い値になったと主張。過去の公害訴訟では、この確率が50~70%でも原因となる出来事と病気との因果関係が認められており、被曝と甲状腺がんの因果関係は「高度の蓋然(がいぜん)性をもって、証明されたものとして扱ってよい」などと述べた。

 今後は来年1月25日と3月15日に弁論期日が設定されており、それぞれ2人の原告が意見陳述する予定。(笠井哲也)

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