「必要性、理解されなかった」 感染症研究軽視の代償、コロナで露呈

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後藤一也 野口憲太 市野塊
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 新型コロナウイルスは、日本の感染症研究の課題も浮き彫りにした。コロナが収束したとしても、新たな感染症による次のパンデミック(世界的大流行)は、いつ起きてもおかしくない。対策は急務だ。

 「基礎研究も含めた研究環境の向上などを推進することは急務」。新型コロナ対策を検証する政府の有識者会議(座長・永井良三自治医科大学長)の報告書は、コロナで顕在化した日本の研究力の低下への危機感をあらわにした。

 研究論文の低迷は、日本がこれまで、いかに感染症を軽視してきたかを物語る。欧米では、国防などの観点からも新興感染症への危機感が強い。日本もかつては結核などの流行があって感染症への関心は高かったが、感染者が減るとともに下火になった。

 国の感染症の中枢を担う機関の人員不足は深刻だ。科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センターの資料によると、2020年度の国立感染症研究所の常勤職員は約360人。米国の疾病対策センターは、全米と世界各地に医師や研究者など1万1千人の職員がいる。

「感染症に本気で向き合った国ではない」

 コロナ対応にあたってきた国立国際医療研究センターの大曲貴夫・国際感染症センター長は「感染症の専門家は少なく、必要性も理解されなかった。日本は感染症に本気で向き合ってきた国ではない」と話す。感染症指定医療機関に必ずしも感染症の専門医がいるわけではない。「研究」をする設備も人員も備わっていない。

 2009年の新型インフルエンザ、12年の中東呼吸器症候群(MERS)などの感染症危機が発生すると、対策の重要性を指摘する声はあがったが、継続した議論にはつながらなかった。このため、新型コロナが流行し始めたとき、医療機関、研究機関、製薬企業の連携は乏しく、大曲さんは「すぐに薬やワクチンができる体制になく、専門家同士のつながりもゼロだった」と振り返る。

 そうした中でも、国内のデータを利用して、厚生労働省のクラスター対策班は「3密」という概念を提唱し、国内の研究者らはオミクロン株の特徴を速やかに発表してきた。

 だが、新薬開発には欠かせな…

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