6日から、国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)がエジプトで開かれます。気候変動問題を担当した元外交官の前田雄大さんは、交渉の場は「戦場」だといいます。何が話し合われているのでしょうか。
――COP(コップ)って、そもそもどういう意味なんですか。
「Conference of the Parties」の略で、日本語では「締約国会議」と訳されます。国際社会には多くの条約がありますが、その条約を結んでいる国々が集まって行う会議のことを指します。
今回エジプトである「気候変動枠組み条約締約国会議」のほかにも、湿地保護のラムサール条約、絶滅のおそれのある動植物の国際取引を規制するワシントン条約など様々な「COP」があるんですよ。
今年の12月には生物多様性条約の第15回締約国会議(COP15)がカナダで開かれます。2010年に名古屋で開かれたCOP10で採択された世界目標(愛知目標)に続く新しい目標を決める節目の会議です。世界が注目する「COP」が2カ月連続で開かれることになります。
――COPと言えば、気候変動問題のイメージが強いです。
そうですね。気候変動問題は人類の将来に関わり、経済やエネルギーにも密接に関わるので関心が高い。会議は毎年開かれていますし、物事が大きく進むこともあります。
――気候変動枠組み条約が採択されたのは1992年。なぜ30年も議論が続いているのでしょうか。
条約では、温暖化を止めるために大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを「究極の目的」とうたっています。しかし、温室効果ガスの排出増加がいぜん止まらず、気候変動に伴う災害も増えています。気候変動が続く限り会議も続く、ということでしょう。
気候変動問題はすごく難しいです。原因となる二酸化炭素(CO2)の多くは石炭や石油など化石燃料を燃やす時に出ますが、経済、社会活動が活発になると、どうしてもCO2が増えてしまう。経済発展とCO2の排出は相関関係にあります。実際、すでに経済発展を遂げた先進国はその過程で、CO2を大量に出しました。
一方で発展途上国にとっては、これから発展したいのに、先進国と同じような排出削減の責任を課されてしまうと、成長が難しくなってしまう。先進国こそ、排出削減に責任を負うべきだという主張を続けています。198の国と機関が参加し、全会一致が原則です。温暖化に対する「責任の所在」は問題を非常に難しくしています。
――COP3で採択された「京都議定書」では、日本6%減、欧州連合(EU)8%減、米国7%減など先進国にのみ排出削減義務を課しました。その後、中国やインドなど新興国の排出も伸び、15年のCOP21のパリ協定の合意に至りました。
パリ協定は、先進国も途上国も各国が自ら排出削減目標を決める。それがちゃんと前進しているか、より良い方法がないかを世界全体でチェックして、話し合っていくという枠組みになっています。
重要な論点は「共通だが差異ある責任」という原則です。先進国も途上国も気候変動に対する責任は一緒に負っているけれども、その責任の負い方には差がありますよ、という意味です。この原則に立ち、「最大公約数」で一致点を見いだしていこう、という交渉を行っています。
記事の後半では、日本が毎年のように受賞する「化石賞」や、交渉での各国の様子、日本の評価とCOP27の注目点について聞いています。
気候変動交渉は、武器なき戦争?
――かつて各国が数値目標を話し合っていた時代の気候変動交渉は、「武器なき戦争」とも呼ばれていました。
その定義は引き続き当てはま…