国家安全保障戦略、9年ぶり改定 防衛力に傾かず長期的視点で議論を

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記者解説 編集委員・藤田直央

 政府が2013年に初めて定めたNSSの改定は、実は18年にも検討されていた。北朝鮮が17年にかけ核実験やミサイル発射を繰り返したためだが、当時の安倍晋三首相は「現下の安全保障環境は(13年の)戦略で示された基本的な枠内」として見送った。

 岸田文雄首相は今年末のNSS改定について、2月に起きたウクライナ危機が「明日の東アジアかもしれない」として備えを訴えるが、改定する方針は昨秋の就任時に表明している。18年から昨秋までに何があったのか。北朝鮮のミサイルの高性能化に加え、日本自身の対中政策が硬化していた。

 安倍氏は19年、習近平(シーチンピン)国家主席と会談し「日中関係は完全に正常な軌道に戻った」と強調。習氏が20年春に国賓として来日することで合意したが、コロナ禍でめどが立たなくなった。

 一方で安倍氏は20年6月、「安保戦略の徹底的な議論」を唐突に打ち出す。敵のミサイルをいかに防ぐかについて、迎撃する新型兵器の陸上配備を候補地の住民への説明の不手際からやめると表明した上で、失態を逆手に取り議論を本格化させた。

 安倍氏は外相や防衛相らと重ねて協議。自民党にも議論を求め、北朝鮮に加え中国の「ミサイル脅威」に備える提言を得た。そして9月、健康問題で退陣する直前の談話で「迎撃能力の向上だけで国民を守り抜けるのか」と述べ、抑止力を高めるよう訴えた。

 その姿勢を継いだ岸田内閣は…

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    藤田直央
    (朝日新聞編集委員=政治、外交、憲法)
    2022年10月29日18時45分 投稿
    【解説】

    書きました。国家安全保障戦略というと「軍事最前線」的なイメージを持たれる方もいるかもしれませんが、全くそんなことはありません。国際社会の中で、ある国が国民の命や暮らしをどう守るか。前提として国際情勢をどう捉え、どう外交を展開し、経済でつなが

    …続きを読む