北陸新幹線延伸で促進大会
北陸新幹線を福井県敦賀市から大阪市まで延伸させる計画について、京都府や大阪府などでつくる関西広域連合は24日、東京都内で大会を開き、整備の促進に向け、必要な整備財源の確保を政府・与党に求める決議を採択した。だが、京都府内では工事による環境への影響が懸念されており、府は国などに対し住民への説明と、慎重な調査を求めている。
大会には国土交通省や関係する国会議員ら計約150人が参加。福井県の杉本達治知事は、「ぜひとも2023年度当初に着工する。財源などの条件を年末までに乗り越えてほしい」と話した。参加した沿線自治体選出の国会議員からも、建設残土や環境保全の課題解決は不可欠だとしつつ、「一日も早い着工を」「着工前でもできることを進めていく必要がある」などの意見が相次いだ。府から鈴木貴典副知事が出席したが、発言はなかった。
北陸新幹線は金沢―敦賀間が24年に開業する予定だ。国は敦賀駅から路線を延ばし、福井県小浜市付近、京都市、京田辺市付近を通り新大阪駅までの約140キロをつなぐことを目指している。線路の想定区域には、府内を縦断する全長約60キロの地下トンネルも含まれる。総工費は16年の段階で約2・1兆円と試算されている。
福井市など北信越5県の沿線44市でつくる「北陸新幹線関係都市連絡協議会」は、来年度の着工を求めている。だが、工事を担当する「鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT)」が進めている、周辺環境への影響をみる調査(環境影響評価)は、計画より遅れている。線路が通る可能性がある京都府内の住民や団体から環境面で懸念の声が上がっているからだ。
線路が地域を縦断する可能性がある南丹市美山町の一部では、「地域の地下にトンネルを掘れば、有害な汚泥が出る恐れもある」として、調査の受け入れ拒否が続く。京都市の地下では、地表から40メートル以上の深さでトンネルを掘ることが検討され、大量の残土が出ることや地下水への影響も問題視されている。同市の市民団体は、今月、計画の撤回を求める約2万7千人分の署名を国に提出した。
こうした住民の動きを受け、西脇隆俊知事は、今月14日の会見で「調査では地下水の影響や建設で出る土の処理など課題がある」と述べ、機構に対し、環境保全の対応を引き続き求めるとした。府の担当者は、「基本の考えは連絡協議会と同じ方向性だが、急いで調査の手順を飛ばすことはあり得ない。一つ一つ進めていくしかなく、調査終了時期については何とも言えない」と話す。
調査が終わり、国が実施計画を認可すると着工する流れだが、府や市にとっては、延伸にかかる費用の負担も大きな課題だ。24日の大会決議では、国に対し早急な財源確保とともに事業費抑制も求めた。府は、今年度の予算で、促進組織の会費を支払っただけだが、将来的には、建設費から鉄道事業者が支払う施設使用料を引いた残りのうち3分の1を、周辺自治体で負担することになる。財政難に苦しむ京都市の門川大作市長は、朝日新聞の取材に「整備新幹線は国家政策として国全体の利益のために取り組むもので、通らないところは負担しない、というのはあり得ない話。まずは、国に対して地方の負担の極小化を求める」との考えを示した。