寄宿舎の廃止、栃木はスクールバスで代替 意義見いだす県も

小野智美
[PR]

 知的障害の子が通う特別支援学校寄宿舎栃木県教育委員会が来春で廃止することを受け、朝日新聞は47都道府県の県教委に設置状況を調査した。同校に知的障害の子を対象とした寄宿舎があるのは、36道府県にのぼる。栃木県教委はスクールバスの増便で、いまは通学困難な子が学校に通いやすくなることを廃止の理由にしているが、寄宿舎の生活そのものに教育的効果を見いだす県が少なくない。

 長野県には知的障害の子の特別支援学校10校すべてに寄宿舎があり、通学困難者以外にも門戸を開く。今年度の利用者246人のうち、9割以上が通学困難者ではない。県教委特別支援教育課の今井友陛指導主事は「いまは自立支援も求められている。変化するニーズに合わせて寄宿舎を活用している」という。

 学びの場としての寄宿舎の活用に前向きなのは宮城県だ。2016年度に開校した県立女川高等学園は通学困難かどうかにかかわらず、全校生徒が寄宿舎に3年間入る。県教委特別支援教育課は全寮制にした理由を「集団生活を通して自立する力を高め、社会人として独り立ちできるようにする」と説明する。

 通学困難者以外の生徒も受け入れる県立小牛田高等学園の野中淳教頭は「中学時代は特別支援学級で1人や2人で過ごすことが多い。部活の経験も少ない。寄宿舎で長い時間を一緒に過ごせば仲間同士の葛藤が生じ、心を整える力がつく。それが社会に出て生活していくうえで一番必要な技術ではないか」と語る。

 千葉県も同様だ。県教委は3月、第3次特別支援教育推進基本計画で寄宿舎の新たな活用方法の研究を打ち出した。県立銚子特別支援学校の脇田裕文教頭は「自立に向け、掃除も洗濯も全部自分でやる寄宿舎は教育資源として使える。これは一時的な宿泊学習では身につかないだろう。寄宿舎は老朽化しているが、修理しながら使っている」と話す。

 県立東金特別支援学校の唐鎌和恵校長も「同じ学年同士で1泊する宿泊学習と寄宿舎はまったく違う」と指摘。「年齢の異なる仲間と生活をともにする寄宿舎では友だち関係を通して自分の良さも見つけ、自己肯定感を高めることができる」という。

 文部科学省の有識者会議も3月、通学困難者のためという観点に加え、自立と社会参加に向けた日常生活の指導をするという観点から、寄宿舎機能を設定することも有効だと提言した。(小野智美)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら