第4回髪を隠す布は女性抑圧の象徴? 多様な価値観、それでも広がった連帯

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 髪の毛を隠す布「ヒジャブ(ヘジャブ)」をめぐり、イランで抗議デモが広がっています。そもそも、なぜ、イスラム教の国では髪を隠す女性が多く、イランではヒジャブの着用が義務づけられているのでしょうか。22歳の女性の死をきっかけに、イラン全土だけでなく、日本を含む世界各地でデモが広がった理由とは――。イランの文化やジェンダー問題に詳しい横浜市立大学の山崎和美准教授(近現代イランの社会史・女性史・教育史)に聞きました。

 ――ヒジャブとは何でしょうか。イスラム教徒が多い国には、髪を隠すための様々な布があるようですが、違いは何でしょうか

 ヒジャブはアラビア語の「隠す」から派生した語で、ムスリマ(女性のイスラム教徒)が頭や身体をおおう衣類のことです。イランでは、ペルシャ語なまりでヘジャブとも呼ばれます。英語ではベールとなります。

 イランではコートを着てスカーフやショールをかぶりますが、ほかに伝統衣装の「チャドル」を着る人もいます。全身を覆う丈の半円形の布で、頭からすっぽりとかぶります。ほかにも、「マグナエ」とよばれる尼僧の頭巾のような形の布をかぶる人もいます。

 サウジアラビアの女性が着る、全身を覆うワンピースのような民族衣装は「アバヤ」、目以外を隠す覆面は「ニカブ」と呼びます。アフガニスタンの女性が着る、目の部分が格子状になっている衣装は「ブルカ」です。

 東南アジアでは近年、ニカブのことを「チャダル」と呼んでつける人たちが増えていると講演などで聞きました。このように、ヒジャブは国や地域によって名称も形状も多様です。

 ――イランでは、イスラム教の聖典コーランにある「美しいところは人に見せないように」という記述が、ヒジャブ着用の根拠とされていると聞きました。そもそも、イスラム教徒の女性は、なぜ髪を隠さなくてはならない、とされているのでしょうか

やまざき・かずみ 東北大国際文化研究科専門研究員などを経て現職。専門はイラン近現代史。公益財団法人「中東調査会」客員研究員も務める。「イスラーム・ジェンダー・スタディーズ3:教育とエンパワーメント」(長沢栄治監修、服部美奈・小林寧子編著、明石書店)で「イランにおける近代女子教育の成立」を担当。

ヒジャブの解釈 女性の数だけ

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 髪を隠す慣習は、イスラム教…

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