「あなたは独裁者だ」 放送局辞めた僕が「忖度の空気」を撮ったわけ

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細見卓司

 富山県のチューリップテレビの調査報道で2016年に発覚した富山市議会の政務活動費をめぐる不正を追及したドキュメンタリー映画「はりぼて」の五百旗頭幸男監督(44)の新作映画「裸のムラ」が8日に公開される。保守王国の石川県を舞台に、「過剰な忖度(そんたく)の空気」を捉えようとしたドキュメンタリーだ。原点は約2年前、同社に漂う「忖度」の姿勢にあらがって退職したことにある。

むき出しの「警戒感」

 本作の冒頭、雪が舞う石川県庁前に1台の黒塗りの車が到着し、中から現れた男性が、奥へすたすたと歩いていく。現職最多の7期28年を務めた谷本正憲・前知事(作中では現職)だ。

 コロナ禍に「無症状の方は石川県にお越しいただければ」と発言し、少人数での会食を呼びかけながら自身は後援会メンバーらと90人以上で会食……。そんな知事の振る舞いが相次いで画面に映し出される。知事の会見の際は、廊下にスーツ姿の男性職員たちがずらりと並ぶ。

 「(20年春に石川テレビ放送に移籍して)県庁の取材を開始したときから、違和感を感じたんです。異常なまでに周囲に目を配る職員の数の多さ。その気配りはいったい何なんだと。『これはやめてください』と直接言ってくるわけではないけれど、警戒心をむき出しにしている感じはすごく感じました」

 「県議会を取材した際、知事が答弁しているのに、議員は寝ていたり、雑談したりしている。学級崩壊状態です。僕が『この様子を撮ってください』とカメラマンに指示すると、そのカメラマンは『(この光景は)いつも通りだから。別におかしいと思わなかった』と言う。その発言にも違和感を覚えました」

五百旗頭監督が捉えようとした「空気」の源はどこにあるのか。それは、監督が放送局を辞めるに至った原因と深く関係していました。いったい何があったのか、詳しく明かしてくれました。

 五百旗頭監督は、メディアに…

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    プチ鹿島
    (時事芸人)
    2022年10月6日21時57分 投稿
    【視点】

    「はりぼて」に唸ったのは、あれは富山が特殊なのではなく全国のあちこちで同じことがおこなわれているんだろうなぁと思わせたところ。笑いを軸に描いていたのですがだんだん「笑えなくなる」という描き方もよかった。この記事では「はりぼて」で気になってい

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