はやりの「地政学」本を置かない理由 鎌倉の書店主に聞いた

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聞き手・岡田玄
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 これまでの国際秩序が揺らぐ中で「地政学」という言葉が多く聞かれるようになった。書店でも「地政学」を冠した本が平積みされている。だが、神奈川県鎌倉市の書店「ポルベニールブックストア」の書棚には「地政学」と名の付く本はない。売れ筋のはずなのに、なぜ、置かないのか。書店主の金野典彦さんに聞いた。

 神奈川県鎌倉市の大船駅近くで、個人で小さな書店を営んで3年半になります。書棚には、特定の人種、国や国民をさげすむ、いわゆるヘイト本は置いていません。ヘイトは差別。差別は人権侵害ですから、当たり前のことだと思います。

 近所には他にも書店がありネット通販もあるので、うちでなくても本は買えます。ではどんな本を置くかというと、基本は好奇心です。

 自分の好奇心が刺激されるかを基準に、表紙やタイトルを見て興味を惹(ひ)かれた本の中から、内容、著者のプロフィルや過去の著作、類書などを調べ絞り込んでいきます。日々選書を続けることが、社会のことを学び、自分の考えを鍛える、とても良い「自主トレ」になっています。

 「地政学」に関する本は置いていません。国家や国際関係を論じていて、主語が大きい。語られることを個人として引き受けられず、責任を持てないと感じます。

 国際情勢についての研究や報…

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    奥山晶二郎
    (サムライトCCO=メディア)
    2022年9月14日17時30分 投稿
    【視点】

    「今読むべき本」が「読みたい本」になる錯覚という指摘。普段、データとにらめっこする機会が多いこともあり、身につまされました。 地政学は主語が大きくなる。主語が大きくなると対話が成り立たない。これまた、納得感しかありません。それを証明す

    …続きを読む