保育士・てぃ先生に聞く  現場の「余裕のなさ」 原因はどこに?

有料記事

文・岩本美帆 写真・伊藤進之介

 SNSの総フォロワー数が約150万人の保育士、「てぃ先生」は、現役保育士の立場から現場の声を伝えてきました。保育士の一斉退職や園児への虐待など、保育園にまつわる問題についても、率直な意見を発信しています。園児が通園バスに置き去りにされ亡くなるという痛ましい事故などは、なぜなくならないのか。保育の現状や、保育の仕事にかける思いを聞きました。

   ◇

 ――ツイッターやユーチューブなど、保育業界について歯に衣(きぬ)着せず発言しています。

 ゲームチェンジャーといいますか、状況をちゃんと説明し、変えていく現場の人間が必要です。「保育士は大変」と言うのは簡単ですが、環境が変わるのをただ待っていてはだめ。大変、可哀想という価値観だけで地位向上や待遇改善を求めるのではなく、業界の内側からもできることをやっていかないと。

 「可哀想」の結果が、今年2月に始まった処遇改善臨時特例事業です。収入の3%程度(月9千円)が上乗せされますが、支給するかどうかは運営者任せで一律に行き届いていない。感情論では変わりません。

一からつくる「月案」「壁面構成」……本当に必要?

 ――保育業界で最も変えないといけないことは。

 保育士の数や賃金を増やす前に、まず業務量を減らすことです。たとえば「壁面構成」と呼ばれる、保育室の壁に飾る季節の行事にちなんだ絵などの制作。

 書類業務も多すぎます。毎月行う避難訓練の計画書を毎回、一から書かせる園もある。たとえ同じ内容であってもです。その月の保育計画、「月案」は、一人一人の子ども用と全体用があって、全体用は毎年、内容がほぼ同じでも、一から書く。体感として、子どもと直接関わる仕事は全体の4割ほどになってしまっている。

 ――なぜ負担が減らないのでしょう?

記事の後段では、なぜ保育現場の業務が減らせないのかや、保育の質を高めるために必要なことを伺いました。

 園長や理事長が変化を恐れて…

この記事は有料記事です。残り2383文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません