1年ぶり運行のD51 4カ月かけた中間検査

角津栄一
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 デゴイチの愛称で知られる蒸気機関車(SL)「D51」が今夏、約1年ぶりに運行を再開した。10月まで週末を中心にJR上越線(高崎―水上)、JR信越線(高崎―横川)をそれぞれ客車を牽引(けんいん)して走る。

 運行再開を前に、D51が受けたのが「中間検査」だ。一定の走行距離に達すると実施する検査で、JR東日本高崎支社の「ぐんま車両センター」(群馬県高崎市)で4月から7月にかけ、走行装置やボイラー、ブレーキ装置など重要な装置の点検、整備を受けた。

 D51は1115両製造された。今回運行しているのは498号で、昭和15(1940)年に国鉄の前身「鉄道省」の鷹取工場で製造された。国内で動態保存(営業運転)されているD51は、498号を含めて2両だけだ。

 中間検査に携わったのは高崎支社の佐藤隼主任(35)ら5人の検査員。大宮総合車両センターのSLチームの指導、支援を受けながら進めた。

 SLにはボルトなどの締め付け用の部品が多数使われており、検査ではこれを十分に締め付け、打音検査で確認した。走行中に振動で緩むことがあり、分解しない箇所も検査対象だ。

 打音検査では、音の高さと響き具合でしっかり締結されているかを確かめる。適切に締結されていると、響いた、高い音がするのに対し、緩んでいるとこもった、鈍い音がするという。ボルトやナット、素材、サイズなどで基本となる音の高さが変わるため、経験や教育訓練が重要だ。

 試運転を前に「火入れ」も実施された。ボイラーで火をおこし、石炭を燃やして水から蒸気をつくる状態にするものだ。SLのボイラーは大きく、こまめに火をおこしたり、消したりすることが容易でないため、火をおこすとある程度の期間、その状態を維持することになる。火を維持する作業は「保火」と呼ばれ、24時間体制での作業になる。

 D51の運行は、こうした苦労の末に実現している。(角津栄一)

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 鉄道の定期検査 鉄道は安全運行のため、国土交通省の省令で、車両や施設について種類や設置場所に応じた定期検査が義務付けられている。今回の「D51 498」の中間検査では、機関車の車輪やブレーキ装置、ボイラーなどを検査した。石炭と水を搭載し、機関車の後ろに連結する箱形の車両「炭水車(テンダー車)」の車体や台車も安全性を確認した。

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