第1回「ペロシ氏機が消息絶つ」 台湾を襲うフェイクニュース、日本語でも

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台北=石田耕一郎
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 台湾を舞台にした米国と中国の対立が世界を揺るがし、「ペロシ・ショック」とも言うべき事態が起きた今夏。サイバー空間でも、大規模な攻撃が繰り広げられていた。

フェイクニュースに揺れる島 台湾「情報戦」を追う

台湾では、サイバー攻撃に見舞われ、フェイクニュースが出回ることが半ば日常となっています。台湾側は、中国政府の関与を疑い、統一への抵抗をくじく狙いがあるとみます。「情報戦」とも言える実態へ迫りました。

 始まりは、さほど目立つものではなかった。

 セキュリティー大手「トレンドマイクロ」の台湾支社で本部長を務める洪偉淦さん(56)が奇妙なことに気づいたのは、7月下旬のことだ。サイバー攻撃などの監視契約を結ぶ約500社の顧客企業に対し、ハッキング目的で届く詐欺メールの数が増えていた。

ペロシ氏の訪台で、台湾でフェイクニュースが大量に出回ります。それは中国語だけではなく、日本語のものも含まれていました。だれが、何の目的で発信するのでしょうか。記者が探ります。

 攻撃で使われたプログラムの種類やメールの文面などから、中国が関わっていると判断した。だが、増加の原因まではわからなかった。最近は、かつて大量にあった企業への攻撃が下火になっていた事情もある。

 「中国が再びサイバー攻撃を強化し始めたのかもしれない」

 そう感じていたところ、8月に入って謎は解けた。

 2日午後11時前、米国のペロシ下院議長を乗せた専用機が台湾の空港に到着した。中国の猛反対を押し切ってのことだ。時を同じくして、監視を続けていた詐欺メールの数が増え続け、翌3日にピークを迎えた。その数は、通常時の2倍に達していた。

 洪さんの結論は、「攻撃側が詐欺メールによって事前に企業のシステムに侵入しようとしている」。すぐに顧客企業に、「『政治的な理由』で国ぐるみの組織によるハッキング攻撃が行われている」と警告した。ネットワークシステムへの侵入防止対策を強化するよう、促すためだ。

 だが、被害はすでに台湾全土であらわれていた。

コンビニの電光掲示板が…

 南部・高雄にある台湾鉄道の…

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    古谷浩一
    (朝日新聞論説委員=中国政治、日中)
    2022年8月27日21時19分 投稿
    【視点】

    フェイクニュースという言葉は定義のあいまいさも含めてあまり好きではないですが、台湾での偽情報やデマをめぐっては、私も苦い記憶があります。 去年の6月、日本から台湾にアストロゼネカ製の新型コロナのワクチンを供与したときのこと。台湾社会はこれ

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