電力「危機」あおり政治決断、一気に原発回帰 福島事故の教訓どこへ

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岩沢志気 西村圭史 関根慎一 山野拓郎 長崎潤一郎

 政府は東京電力福島第一原発の事故後の原子力政策を転換させる方針を明確にした。24日のGX(グリーン・トランスフォーメーション)実行会議で「政治決断」の名の下に、岸田文雄首相がかじを切った。

 参院選から1カ月。原発の新増設や運転期間延長の検討、新たな再稼働と、踏み込んだ推進方針を一気に打ち出した。GX実行推進担当相も兼ねる西村康稔経済産業相は会議後「検討を加速し、年内をめどに結論を得たい」と話した。

 この日の会議には岸田首相や西村経産相のほか、学識経験者や経団連の十倉雅和会長など政府が選んだ12人の委員が参加した。その場で、原子力政策の今後のあり方については時間軸を分けて課題が示された。

「次世代革新炉」を開発

 2050年の脱炭素の実現や電力の安定供給に向けて「次世代革新炉の開発・建設」が検討課題として盛り込まれた。東京電力福島第一原発の事故後、政権が避けてきた「建設」の議論が始まることになる。ただ、原発に対する世論は二分している。再稼働の地元同意も政府が思うようには進んでいない。新増設は与党内でも慎重意見があり、ハードルははるかに高い。

 次世代革新炉について、政府は「既存の原発に安全性や経済性の観点から優れた新技術を取り入れたもの」と主張。会議でも新増設などの検討に反対の声は上がらなかったという。

 経産省は7月に、革新軽水炉、小型軽水炉、高速炉など複数の技術を挙げ、各国が建設を進めている革新軽水炉の開発を「最優先に取り組む」とした。経産省の担当者は「革新軽水炉はかなり今ある技術と言ってよい」と語る。

 さらに、原則40年の運転期…

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