学校が苦手なら映画館へ来てみない? ふらっと雑談だけでも大丈夫
学校に行きづらい子は映画館においで――。長野県上田市の三つのNPO法人が協働し、毎月2回、築100年を超える映画館で無料上映会を続けている。孤立しがちな若い世代に、さまざまな映画作品と出会う機会と、人と交流する居場所を提供している。
朝10時前、映画館「上田映劇」前に「うえだ子どもシネマクラブ」の看板が置かれると、小中学生が次々とやって来た。8月8日午前の上映作品は「映画ざんねんないきもの事典」。子どもたちはロビーで無料のポップコーンを受け取って客席へ。親やきょうだいと一緒の子も多い。
上映が始まってもロビー脇のカフェスペースで絵を描くのに夢中な子たちがいた。どう過ごすかは自由。カフェではNPO法人のスタッフが遊んでくれる。映画をみるのに疲れたら途中で客席から出ても良い。昼休みや午後の作品「河童のクゥと夏休み」上映後のロビーでは、タブレット端末でゲームをする子どもや、話し込む若者と大人の姿もあった。
76人のシネマクラブ登録者のうち、この日に参加した子どもは21人。保護者や支援者も15人来ていた。「久しぶり」「初めて? 楽しんでね」などと声をかけていた直井恵(なおいめぐみ)さん(43)は、NPO法人「アイダオ」の事務局長だ。
シネマクラブは「アイダオ」と、上映や館の保存・活用を担う「上田映劇」、若者の自立を支える「侍学園スクオーラ・今人(いまじん)」の三つのNPO法人が協働。「孤立を生み出さないための居場所作りの整備~コミュニティシネマの活用~」事業として、2年前から続けてきた。今年度までの活動資金は、休眠預金を活用した助成でまかなう。
上映会は原則月2回の月曜だが、毎週水曜と金曜も、別館として使う近くの映画館の事務所を登録者らの居場所として提供する。最近は中学生や自立を目指す20代の女性ら数人が来ておしゃべりや勉強をするほか、ポスターを貼り替えるなどの作業を手伝う。
「学校が苦手だったり卒業後に悩んだりしている人が、映画でいろんな人生や価値観に触れて、なにか感じてもらえれば。映画館に来れば人と話す機会もあるし、細かい作業をしてくれるのは私たちも大助かりです」と直井さんは言う。
今年2月には「映画館は未来をつくる学びの場」と題したシンポジウムも開いた。中学1年(当時)の女子生徒は、「学校に行っていない人とかいて相談しやすいし、ひきこもっているよりは絶対こういうところに来た方がいいと思います」と利用者としての意見を壇上から語った。
記事の後半では、通って来る子どもの感想や、子ども、保護者と関わるほかの取り組みとの連携を紹介します。
この女子生徒は昨年の夏休み…