リニアめぐり大井川流域首長と川勝知事が意見交換
リニア中央新幹線の静岡工区の課題について、川勝平太知事と大井川流域10市町の首長らが10日、県庁で意見交換した。県外流出するトンネル湧水(ゆうすい)と同量のダム取水を抑制するJR東海の案をめぐり、流域首長からは検討に前向きな意見が出た。
会合は2020年6月以来3回目で、JR東海が大井川上流部の田代ダムでの取水抑制案を示してから初めて。非公開で行われ、閉会後、川勝知事と一部の市町長がそれぞれ、報道陣の取材に答えた。
川勝知事は取材に「(ダム案による河川流量確保について)希望が強いことがよくわかった」と述べ、今後の協議や県専門部会による審議に期待を示した。
双方の説明によると、ダムでの取水抑制案について、島田市の染谷絹代市長が「現実的な案として前向きに検討してほしい」と知事に要請したという。
同案をめぐっては、川勝知事が8日に現地を視察した際、県が求める「全量戻し」ではなく、JR側の「地域貢献」との見方を改めて示しているが、染谷市長は閉会後、「流域住民の暮らしを預かる立場としては水資源が守れたらいい。リスクを回避するために議論をしたい」と話した。首長の一人は取材に「(水利権がからんで調整は)簡単ではないが、可能なら有益だ」と語った。
会合ではこのほか、県が沿線都府県でつくる建設促進期成同盟会に加盟した経緯をめぐり、流域首長側が真意を尋ねたという。これに対し川勝知事は、水資源や南アルプスの自然環境問題をめぐる審議が県の専門部会や国の有識者会議で続いていることを踏まえ、「工区の着工は前提ではない。現時点では工事を認めていない」と理解を求めた。
また、リニアをめぐる問題について積極的な情報共有を求める流域側の要請で、今後、知事や県専門部会委員と対話する機会を設けていくことで一致した。