県内鉄路の赤字最大49億円 19年度の収支JR公表

茂木克信
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 JR東日本が公表した利用客が少ない路線ごとの収支で、新潟県内を走る8路線11区間の2019年度の赤字額が初めて明らかになった。新型コロナウイルスの影響が本格化する前の時期に当たるが、最大49億円に上る。同社は、厳しい経営環境はにわかに改善しないとして、沿線自治体と地方交通のあり方の議論を深めたいとしている。

 同社が公表したのは、1日1キロあたりの平均利用者数(輸送密度)が2千人未満の35路線66区間の経営情報。この中で、県内を走る羽越線の村上(村上市)―鶴岡(山形県鶴岡市)は19年度、赤字額が最大の49億900万円となった。貨物列車も走る路線で高品質の線路を使っているため保守費がよりかかることや、雪対策の経費がかさむことが主な要因という。

 ほかに赤字額が10億円を超えたのは3路線3区間あった。上越線の水上(群馬県みなかみ町)―越後湯沢(湯沢町)の15億7200万円▽越後線の柏崎(柏崎市)―吉田(燕市)の12億6400万円▽磐越西線の津川(阿賀町)―五泉(五泉市)の10億6千万円で、合わせて県内8市町村を通る。

 輸送密度が最も低かったのは、只見線の只見(福島県只見町)―小出(魚沼市)の101人。1987年度からの減少率では、磐越西線の野沢(福島県西会津町)―津川の89%が最大だった。

 JRの突然の公表を受け、路線の存続に腐心する沿線自治体には動揺が広がる。村上市の高橋邦芳市長は28日、「羽越線は通勤、通学の手段として市民の利用も多く、日本海沿岸東北自動車道と並んで重要な交通手段の一つ。引き続き、活性化に向けた取り組みを進めていきたい」とのコメントを発表した。

 同社新潟支社の小川治彦支社長は同日の記者会見で、「(赤字路線の)存廃の議論を直ちに始める意図はない」と断りつつ、「厳しい経営の実情をよく知っていただくための数字。地域のみなさま、自治体のみなさまにご理解いただきたい」と述べた。今後、各自治体に対し、公表の意図やデータについて詳しく説明していくとしている。

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この記事を書いた人
茂木克信
ネットワーク報道本部(東京)|総局DX
専門・関心分野
地方自治、くらし経済、依存症、セカンドライフ