久留里線一部の輸送密度は62人 JR東の赤字リストに県内3路線
【千葉】JR東日本が28日、収支が厳しい路線を発表した中に、県内からは久留里線全線、外房と内房線の一部区間が含まれた。このうち久留里線の久留里―上総亀山区間は、国の検討会が示した見直し基準も下回った。沿線には紅葉で有名な亀山湖などの観光資産があり、地元は活性化策を打ち出しているが、利用者数の減少には歯止めがかかっていない。
JR東日本は2019年度と20年度実績で、1日1キロ当たりの平均利用者数(輸送密度)が2千人未満の35路線66区間の収支を発表した。県内では久留里線(木更津―久留里―上総亀山)と、外房線の勝浦―安房鴨川区間、内房線の館山―安房鴨川区間が入った(鹿島線除く)。
このうち、久留里線の久留里―上総亀山区間の20年度の輸送密度は62人と県内最少で、営業損益は約2億7千万円の赤字。木更津―久留里区間は1023人で、約8億円の赤字だった。
国土交通省の有識者検討会は今月、路線の見直し基準に輸送密度が千人未満などを示した。久留里―上総亀山区間は該当する。外房と内房線の2区間はかろうじて該当しなかった。
JR東日本千葉支社によると、久留里線は支社で唯一のディーゼル区間。9年前から1~2両編成のワンマン運転が始まり、無人駅が多く、「Suica」が使えない。特に久留里―上総亀山区間は人口の少ない山間部を走り、通勤通学客が少なく、車内も閑散としていることが多い。
同区間の輸送密度は1987年度は823人だったが、18年度に100人を切り下がり続けている。運行ダイヤも1日上下40本のうち、上総亀山まで行くのは17本。日中はほとんどが久留里止まりという。
周辺住民によると、戦後まもなくは木材や竹炭などの積み出しでにぎわい、駅前も飲食店が並んだ。しかし人口減少や少子化が進み、車に客を奪われた。
しかし、駅近くには紅葉で有名な亀山湖があり、毎秋には約15万人が訪れる。JRもこの時期には上総亀山まで臨時列車を出す。ただ地元ホテルによると、大半がマイカー利用で、列車利用は1割ほど。
沿線の君津市や木更津市、袖ケ浦市などは「JR久留里線活性化協議会」を組織し、旅客誘致をしてきた。今年も酒蔵が多い久留里駅を中心に沿線店舗とイベントを計画中で、君津市交通政策室の片倉丈寛室長は「久留里線の廃止や短縮は考えられない」と話す。
亀山温泉ホテルの鴇田英将社長は「現状では列車が少なく、お客様には使いづらい。しかし久留里線は木更津から田園や里山を抜けて山間部に入り、移り変わる風景は美しく、もっと生かせると思う」と話す。