JR東が収支公表、山形県内の反応は
JR東日本が28日に収支を公表した利用者の減少が進む地方路線に、山形県内では米坂線や陸羽東線など6路線10区間が含まれた。JR東は、今後の鉄路のあり方を沿線自治体と協議を進めたいとするが、生活の足が細りかねない地元からは懸念の声が出ている。
揺らぐ生活の足 懸念の声
28日午後3時すぎ、米坂線羽前小松駅(川西町)では、米沢方面の列車に中高生ら10人ほどが乗り降りしていた。駅の周りには、山形県立置賜農業高校や町立図書館などがある。
歩いて15分ほどの置賜農の生徒は、6割にあたる100人超が米坂線を使う。うち、およそ半数が米沢方面からで、南陽市や小国町などから1時間ほどかけて通学する人も。本数が少なく、乗り換えの待ち時間もあり、多くの生徒が苦労しているという。
教頭の酒井孝さんは「農業を勉強したいのに交通が不便なせいで入学を諦める生徒もいる。万が一、廃線となれば、生徒の選択肢をさらに狭めることになるだろう」と危機感を示す。
西米沢駅から通う同高3年の高橋歩美さん(18)は、「バスは座席が少なく狭い。やはり列車の方がいい」と話す。「卒業後も地元で暮らすつもりなので、今後も大事な生活の足になる。廃線は絶対にやめてほしい」と話した。
一方、冷めた声もあった。高校2年の男子生徒(17)は「卒業後は県外に出るので、米坂線は使わないと思う。地元では車を運転するつもりなので、仮に廃線になっても困らない」と語った。
危機感強める沿線自治体 コロナ禍、誘客策も成果出ず
JR東の収支公表に先立ち、国の検討会は、鉄道会社と沿線自治体による見直し協議の目安を示した。要件の一つは、1キロあたりの1日平均乗客数を示す輸送密度が1千人を下回る区間。存続や廃線を前提としない議論を進め、3年以内に双方が合意して結論を出すものとされ、動きが具体化するとみられる。
沿線自治体は路線の利用者を増やそうと様々な策を展開するが、大きな成果は出ていないのが実態だ。
米坂線羽前小松駅では、猫の「しょこら」が2019年秋から駅長に就き、人気を呼ぶ。川西町によると、昨年は約3千人が猫駅長を見に来た。だが、乗客の増加にはつながっていない。コロナ禍の影響もあり、昨年度の乗客数は3年前と比べ、半分近くまで落ち込んだ。
町の担当者は「米坂線は本数やルートが限られ、車で来た方が便利な人も多い。駅には来てもらえるが、列車は利用してもらえていない」と嘆く。
県や沿線自治体でつくる「米坂線整備促進期成同盟会」は22日、小国町で総会を開いた。総会では、地域交通の利便性向上を訴えるなど、対策を求める声が多く上がったという。
沿線自治体でも危機感が広がっている。新庄市などでつくる「陸羽東西線利用推進協議会」会長の山尾順紀・同市長は28日、赤字や利用客減少に強い危機感を示したうえで、「魅力ある路線を維持するためにも、県や他の自治体と連携し、利用促進に取り組みたい」などとコメントした。
吉村美栄子知事も同日、「通勤・通学や生活を支える交通機関で必要不可欠」としつつ、「地域住民の利用拡大や観光などによる交流人口の拡大などに取り組む」との談話を出した…