抜海駅廃駅問題、稚内市長と地元住民が初の直接対話 議論かみ合わず
JR北海道の宗谷線抜海(ばっかい)駅(稚内市)の廃駅問題で、稚内市の工藤広市長と地元住民が19日、初めて直接対話した。工藤市長が地元に出向き、廃駅の方針を改めて伝えた。しかし議論は最後までかみ合わず、住民は少なくとも2年後の開業100年まで存続を訴え、再考を求めた。
二つある地元町内会のうち抜海町内会は17戸で、住民は中学生2人、高校生1人を含む36人。このうち10人が集会所に集まった。
工藤市長は「(駅廃止の検討に)2年以上の時間をかけてきたが、まず残すんだ、廃止はダメ、では議論の余地がない」などと持論の説明に終始した。
地元で唯一の民宿「ばっかす」を経営する伊東幸さん(54)は「死活問題になる」と訴えた。抜海駅を利用する宿泊客だけで年100人を超え、冬もラッセル車を見に訪れる。「代替交通は列車ダイヤに接続するようなものにしてほしい、と市の幹部に何度も伝えてきた」と訴えたが、工藤市長は明確な回答をしなかった。
ほかの住民は、塩狩駅を抱える和寒町が観光資源になるとして維持費を負担している例を挙げた。工藤市長は「抜海駅がなければ宗谷線が残らないわけではない」「よその自治体がやるから稚内がやるということではない」とにべもなかった。
工藤市長は抜海駅の維持管理費年間100万円を来年度以降も市が負担し続けることについて、「市民に説明がつかない」と発言。これに対し、森寛泰町内会長(59)は「開業100年は訪れる人を列車で迎えたい」と、それまでの2年分の維持管理費をクラウドファンディング(CF)で新たに集める考えを明らかにした。「これなら税負担はなく、市民の理解も十分に得られる。駅は自治体管理なので市が介してJRに渡してもらいたい。それだけは協力してほしい」と求めた。
終了後、住民からは「議論の入り口に立っていないのは、廃駅ありきの市長ではないか」との声がもれた。もう一つのクトネベツ町内会への説明会は23日に行われる予定だ。