なぜ野党は勝てないのか 「らしくない」候補立てた選挙区で見た現実

有料記事参院選2022

山田健悟 小島弘之 樫村伸哉 佐藤美千代

 聴衆は2人だけだった。

 参院選公示の5日前の6月17日。金沢市のベッドタウン石川県津幡町に立憲民主党西村智奈美幹事長がやってきた。大型の商業施設が集まる一角で、党公認で石川選挙区に立つ新顔の元行政書士、小山田経子氏(44)とともに、マイクを握った。

 演説が始まっても、人は集まらない。約10分間の演説を立ち止まって聞いたのは2人。

 「今の暮らし、今の政治、ほんとにこのままでいいでしょうか」

 「女性の政治家が生活者の目線で政治を変え、政策を見直す。その力をつけていかなければ」

 西村氏が力を込めるたび、「そうだ」と合いの手を入れる小山田氏。拡声機の大音声は空に吸い込まれた。

 陣営関係者は事前のPRや人集めが不十分だったことを認めつつ、別の関係者は「人を集めようにも集めきれない。これが立憲の現状だ」と明かした。

 参院選で勝敗が注目された全国32の1人区で、立憲などの野党系候補は4勝28敗に終わった。ここ石川選挙区もその一つ。小山田氏は得票が8万3766票、得票率19.71%にとどまり、27万4253票を得た自民現職の岡田直樹氏(60)に大差で敗れた。ただ、1人区の立憲公認候補18人のうち得票率は13番目。極端に弱い候補ではなかった。

 なぜ野党は勝てないのか。候補か、組織か、「風」なのか。行き詰まりの現場を報告する。

「らしくない」落下傘候補に地元は

 話は3月下旬にさかのぼる。金沢市の立憲民主党県連の事務所に所属議員たちが集まった。現職の辞職に伴って4月7日に告示が迫る参院石川補選が議題だ。県連代表の近藤和也衆院議員が連れてくる候補者を示すことになっていた。

 白黒写真が配られた。

 ある議員が声を漏らした。

 「大丈夫なんですかね……」…

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この記事を書いた人
山田健悟
高松総局|香川県政担当

地方政治、行政、ジャーナリズム

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    若新雄純
    (プロデューサー・慶応大特任准教授)
    2022年7月16日13時30分 投稿
    【視点】

    僕も元民主党支持で現支持政党なし。「このままでいいのでしょうか?」は過去最大のブーメランかもしれない。

    …続きを読む
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