改善されぬ少子化 訪問産後ケアの助産師「育児の不安分かって」

参院選2022

前田健汰
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 「大丈夫ですよ、ちゃんと母乳飲めてます」「ちょっとでも不安だったらまた呼んでください」。今月中旬、助産師の幸田久美子さん(40)=山口県宇部市=は出産から1カ月半の母親をその自宅に訪ねた。エプロン姿の幸田さんの掛ける言葉に、赤ちゃんを抱く新米ママの表情は次第に和らいでいった。

 幸田さんは2003年、助産師免許を取得し、病院に勤め始めた。翌年、長男を出産した。子どもを産み育てて感じたのは、社会との「隔絶」だった。正解が分からないまま、家という密室で、子どもと1対1で向き合う苦しさ。「ネガティブな話は親にもしにくい。みんなやっているから頑張るのが当然、と不安を一人で抱えていた」。時折涙を浮かべ、当時を振り返った。

 いつか、お母さんを救う仕事をしよう。そう考え、2人目の息子が中学生になっていた20年11月、勤務が休みの日に母親のもとを訪問し、「産後ケア」をする仕事を始めた。話を聞き、状況にあったアドバイスをして、できているところを必ず褒める。1年で94件の利用があり、「想像以上に求められていた」。

 今年3月に病院を辞め、産後ケア専門の「出張助産院 宿久(しゅく)」を開業した。利用は口コミで増え、宇部市と山口市を中心に訪問は150回を超えた。

 合計特殊出生率(1人の女性が生涯で産む見込みの子どもの数)は全国平均で1・33。県内は少し高い1・48だが、未婚率は上昇し、平均初婚年齢の高止まりが起きている。

 幸田さんは、子育て世帯に対して、行政による医療や教育への資金補助は行き届いていると感じる。一方で、子どもを育てる親への精神的なケアを含めた支援態勢は弱いままだ。育児に不安を感じる社会では、少子化は改善されない。「子育ての苦しい面を分かろうとしてくれる人たちが政治の世界に増えてほしい。家で子どもと2人きりの母親のように、本当に助けを必要としている人は見えにくいところにいるんです」

 予約はホームページ(https://shukuroom.amebaownd.com/別ウインドウで開きます)へ。(前田健汰)

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