過重労働で適応障害、高校教諭の主張認める 大阪地裁、府に賠償命令

森下裕介
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 大阪府立高校の教諭西本武史さん(34)が「長時間勤務が軽減されずに適応障害を発症した」として、府に損害賠償を求めた訴訟の判決が28日、大阪地裁であった。横田典子裁判長は、校長が抜本的な負担軽減策を講じなかった結果、適応障害を発症したと認め、西本さん側の請求通り、府に約230万円の支払いを命じた。

 西本さんは、クラス担任や世界史の教科担当、部活動の顧問、生徒の語学研修の準備などの業務が重なり2017年に休職。その後、適応障害と診断された。19年2月、現役教諭として働き続けながら、「雇い主」の府を相手に裁判を起こし、名前や顔を明かして記者会見し、教育現場の実態を訴えた。

 判決は、適応障害を発症するまでの半年間、1カ月あたりの時間外勤務が100時間程度に上っていたと指摘。「健康を害する程度の強度の心理的負荷だった」と認定した。

 その上で、教職員の健康を害するような状態を認識した場合、勤務先の校長には仕事の分配を見直すなどの安全配慮義務があると指摘。府側は、西本さんからメールで「心身共にボロボロです」などと訴えられた際、効率的に業務をするように声かけなどをしていたと主張していたが「抽象的な指示を繰り返すばかりで、注意義務を尽くしたとはいえない」と判断した。

 吉村洋文知事は「府にとって厳しいものと受け止めている。今後の対応は判決内容を精査し、教育委員会と検討する」との談話を出した。(森下裕介)

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    増谷文生
    (朝日新聞論説委員=教育)
    2022年6月28日19時39分 投稿
    【視点】

     これだけ責任の重い仕事をたくさん背負わされ、これだけ長い時間働き続ければ、多くの人は、この先生のように体調もおかしくなるでしょう。しかも、今回は、校長に繰り返し、不調を訴え、対応を求めていたのですから、判決は当然だと思います。  ベテラ

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    氏岡真弓
    (朝日新聞編集委員=教育、子ども)
    2022年6月29日0時51分 投稿
    【視点】

    時間外勤務が100時間程度とは。過労死ライン超えをはるかに超える労働実態です。校長は「効率的に業務をするように」と声をかけるレベルではなく、業務を減らすべきだったというもので、当然の判断だったと思います。 注目したいのは、西本先生が現役と

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