最古の獣医さん、患畜はあの白ウサギ 獣医療のはじまりを歩く

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太田匡彦

 今では当たり前のように見かけるまちの動物病院。いざという時に犬や猫などを診てもらえ、日頃からペットの健康管理でもお世話になる、頼もしい存在です。では、日本でいつ動物の診療が始まったのか、知っていますか? 話は「神話の時代」にまでさかのぼり、また近代獣医療の発展には明治維新をなしとげたあの人物がかかわっていました。鳥取市や東京都新宿区を訪ね、獣医療のルーツを探ってきました。

 日本海の波音を背中に聞きながら長い階段をのぼり、さらに坂道を行く。左右にならぶ石灯籠(いしどうろう)の上に、小さなウサギの石像が据えられている。しばらくすると左手に、白兎(はくと)神社(鳥取市)の拝殿が見えてきた。

 戦乱でほとんどが焼失し、創建の時期や経緯はわからなくなっているが、戦国武将・亀井茲矩(これのり)によって慶長年間(1596~1615年)に再建された。この地が、日本の獣医療発祥の地と言われている。

 どういうことか。神社の主祭神である「白兎神(はくとかみ)」に、その理由が求められる。権禰宜(ごんねぎ)の河上統一(のりくに)さんは、「古事記に登場する、大穴牟遅神(おおなむちのかみ)(大国主命(おおくにぬしのみこと))に助けられた白ウサギ、いわゆる『因幡(いなば)の白兎(しろうさぎ)』が主神だからです」と話す。

 712年に成立した古事記…

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    太田匡彦
    (朝日新聞記者=ペット、動物)
    2022年6月25日9時11分 投稿
    【視点】

     土曜別刷り「be」の大型企画「はじまりを歩く」で獣医療のはじまりを取材しました。取材を進めていて驚いたのは、日本における近代獣医療の発展に維新三傑の一人、大久保利通が大きくかかわっていたことです。  初代内務卿として、獣医学を教える「農

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