沖縄の小学校に季節外れのひな人形 患者の兵隊さんが込めた思い

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編集委員・伊藤智章
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 ひな祭りの風習がなかった沖縄県で、季節外れのひな人形が6月6日から、南城市の百名(ひゃくな)小学校に並んでいる。

 作り手は元日本兵で、現在の愛知県北名古屋市出身の故・日比野勝広さん。米軍との激しい戦闘があった沖縄戦を生き延び、戦後は故郷で人形職人となった。

 2009年に85歳で死去するまで、沖縄を少なくとも110回訪れた。晩年を撮影した動画が残されている。震える声で叫ぶ。「おーい、きょうも来たぞ。戦友よ。許してくれえ」

 生涯忘れられなかった過酷な沖縄戦。沖縄の人たちとの出会い。日比野さんの様々な思いが宿る人形は1980年に地元に贈られたものだ。戦没者らを悼む23日の「慰霊の日」に向け、飾られる。

 45年5月2日、日比野さんは本島中部の安波茶(あはちゃ)(現・浦添市)付近で、右腕などを負傷した。野戦病院を転々とし、百名小近くの地下の「糸数アブチラガマ」に運ばれた。長さ270メートルもある巨大な洞窟で、千人が収容されていた。

 だが直後、軍は本島南部で持久戦に持ち込もうとガマからの撤収を命じた。首里の司令部も摩文仁(まぶに)へ移った。破傷風でけいれんする日比野さんら重傷兵約150人は置き去りにされた。

 負傷兵は次々に青酸カリで自…

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