ギターソロをスキップするのはなぜ? 曲を切り刻む音楽番組も関係か

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河村能宏
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 ギターソロ。それはロックギタリスト最大の見せ場であり、彼らのアイデンティティーである。エリック・クラプトンやエディ・ヴァン・ヘイレン、プリンス……。そうした音楽に触れてきた私(43)にとってはもはや自明のことだが、どうも、最近ネット上では、ソロのタイミングで曲をスキップするリスナーの存在が注目され、「要不要論」が起きているらしい。曲は分解されて当たり前――。ポピュラー音楽研究者で武蔵大学の南田勝也教授は、昨今のギタースキップ論争の背景には、そんな価値観の浸透があると指摘します。

みなみだ・かつや 1967年生まれ。武蔵大学教授。専門は音楽社会学。著書に「ロックミュージックの社会学」「オルタナティブロックの社会学」など。

 ――ニューヨーク・タイムズの記事で、今年のグラミー賞のロック部門のノミネート曲のほとんどにギターソロが含まれていないとの指摘がありました。それを踏まえ、日本でもツイッターなどで議論が起き、ギターソロをスキップする聴き手の存在が話題になり……。

 「いきなり話の腰を折って恐縮ですが、そもそも最近のロックで、ギターソロの入った曲ってそんなにありますかね。若い世代だと、ギターソロ自体、何を意味するのかピンとこない人もいそうですし。『ギターソロが始まった。いやだなあ。スキップしよう』とどこまで多くの人が思えるのか……。ギターソロをスキップする聴き手が大勢いるという設定自体が空想では」

 ――ギターソロの意味がわからない人っています?

 「そもそも変な言葉でしょ。曲の中でギターはだいたい鳴っていますし。ギターソロとされるパートでも、ベースやドラムなど、他の楽器はガンガン鳴っているんですよ。語義的に間違いというわけじゃないんですが、ソロ(独奏)のイメージに合っていない」

 ――そう言われると、確かに……。

 「ロックの世界では今も昔もギターの役割は大きいです。ただし、ここでいうギターソロ、つまり間奏時にギタリストが美技を披露するプレーのことを指しますが、その存在感が希薄になっていったのは事実です。1990年代に生じたパラダイムシフトが理由ですね」

 ――何が起きたんですか。

 「90年代前半、アメリカでは大規模な世代交代があり、若者の感性やノリが変容し、グランジのニルヴァーナを呼び水としてオルタナティブロックが台頭しました。その結果、ロックサウンドが『波』から『渦』へと移行したのです」

米国では「ギターソロは過去の腐ったロックの象徴」発言も

 ――音楽に「波」と「渦」があるんですか。

 「これは私が提起した理念型…

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    常見陽平
    (千葉商科大学准教授・働き方評論家)
    2022年6月16日17時7分 投稿
    【視点】

    ■ぼくのかんがえるさいきょうのギター・ソロ ベスト10をおしえちゃうぞ Crying in the rain/White Snake タイトルどおり、大雨の中で激しく叫ぶかのような曲だ。ジョン・サイクスによるギターソロは、ブルージーかつ

    …続きを読む
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    若新雄純
    (プロデューサー・慶応大特任准教授)
    2022年6月17日7時51分 投稿
    【視点】

    なるほど、尺に合わせて細かく切り刻まれる時代。次は人間の番だな。それまでには死にたい。

    …続きを読む