「環境作ったのは大人たち」 映画を早送りで観る理由とさらなる未来

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聞き手・佐藤美鈴
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 「映画を早送りで観(み)る人たち」、あなたはどう思いますか――。映画を無断で短く編集したネット投稿者に対して、大手映画会社などが5億円の損害賠償を求めて「ファスト映画」問題が再び注目を集めたが、若い世代を中心に「倍速視聴」「10秒飛ばし」「ネタバレ視聴」といった視聴形態が広がりつつあるという。背景として浮かび上がってくるのは、「タイパ志向」や「快適主義」など、現代社会そのもの。「映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形」(光文社新書)が注目されている、著者の稲田豊史さん(47)に聞いた。

タイパにちなんで、まとめると…

――突然ですが、時間効率主義を意味する「タイパ」(タイムパフォーマンス)にちなんで、この本を1分でまとめると?

 難しいですね……。色んな反響をいただいた中で、「倍速視聴はZ世代がやっている、けしからん習慣だ」と誤解されて切り取られることが多いのですが、まず若者だけの習慣ではない。

 それにそういう環境を作ってきたのは、大人たち。コスパ主義、キャリア教育、ライフハック(仕事効率化のテクニック)と散々言い尽くし、テレビはテロップの洪水にして、わかりやすい説明せりふを作ってきた。全部大人の仕業なんです。

 だから、これは若者ではなく現代人の習慣で、そこだけは誤解しないで、というのがイントロですかね。

――稲田さんは、倍速視聴に対してはどういう立場なのでしょうか。

 あとがきの最後に書いたように、個人的には倍速視聴も10秒スキップもしたくない。それは仕事でもうこりごりになったから。

 記事後半では、「快適主義」の背景や作り手に求められる変化などについて、稲田さんが語ります

 ただ、その習慣がある人を認…

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    伊藤大地
    (朝日新聞デジタル編集長)
    2022年6月10日17時43分 投稿
    【視点】

    活字の読まれ方も、急速に「ファスト化」しているのを感じます。書き出しに惹きつける要素がなければすぐに別のサイトへと移ってしまうのは、多くの編集者が感じていることではないでしょうか。チェックリストやまとめリスト、法則集がないとビジネス書は売れ

    …続きを読む