「恥ずかしがり屋」ハチザクラ 発電所計画地隣の干潟で見つけた新種

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杉浦奈実
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 干潟の豊かさを伝えようとツイッターで生きものの紹介をしていたら、そこに新種が――。岡山大学などのチームは、これまで知られていなかった二枚貝を発見し、新種として発表した。生息地の「ハチの干潟」(広島県竹原市)にちなみ、和名は「ハチザクラ」。とても恥ずかしがり屋だという。

 岡山大の福田宏・准教授(貝類分類学)は昨年8月、研究室に保管していた貝の標本を見て「何じゃこりゃ」と思った。

 当時、ハチの干潟の隣に火力発電所の建設計画が持ち上がっていた。生態系に悪影響が出る可能性があるとして、5学術団体が、環境影響評価の実施を求める要望書を準備しているところだった。

 福田さんはこの干潟の豊かさを知らせようと、軟体動物多様性学会公式ツイッターの「中の人」として、ハチの干潟にすむ多様な生きものを毎日紹介していた。

 違和感を持ったのは、「今日はウズザクラにしよう」と手にした二枚貝の標本だった。20年ほど前に採集して研究室に置いてあったものの中から写真を撮ろうと、50個ほどを見直したところ、うち三つが明らかに大きく、13ミリほどある。ウズザクラは8ミリほどだ。しかも、貝の後方の形が特徴的だった。

 ウズザクラと同じサクラガイ属ではあるが、違う種が混じっていたことに気づいた。他の特徴や、似た形の貝についても詳しく調べ、これまでに報告されていない種だと結論づけた。

 改めて、知り合いにハチの干潟で生きた貝を探してもらった。潮が大きく引いた波打ち際で4個体が見つかった。

 研究室に持ち帰って生きている姿を写真に収めようとしたが「ものすごいシャイなんですよ」。真夜中、真っ暗にした部屋でしか水管を伸ばしてくれず、深夜2時ごろの研究室で、貝が入ったシャーレにかぶせておいた段ボールを素早く取っての撮影を繰り返した。

 他の研究者らに特徴を伝えて調べてもらうと、ハチの干潟のほか、愛媛、岡山、山口の3県で過去に標本が採れていたことも判明。愛知県からも化石は見つかったが、今見られるのは瀬戸内海の西側のみのようだった。生息地が限定され、絶滅の危機にある可能性が高いという。

 福田さんによると、ハチザク…

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