第1回「コロナ前に戻ることが一番危険」脱成長へ、斎藤幸平氏が描く道筋
地球の危機を乗り越えようと、グリーン成長があちこちで唱えられている。「しかし、それでは間に合わない」と、東京大学大学院総合文化研究科の斎藤幸平准教授(経済思想)は言い切る。なぜなのか。どんな道筋がありうるのか。
――著書「人新世の『資本論』」が45万部を突破しました。脱成長論が注目された理由をどう考えますか。
「コロナ禍というタイミングが大きい。コロナによって経済格差が浮き彫りになった。これまでは新自由主義の中で、市場原理に任せて成長すればいい、ということで規制緩和や人員削減が進んできた。だが、こういう大きな危機を前にしては、市場原理では対応できない。国家が介入し、市場そのものに緊急ブレーキをかけざるを得なかった」
「気候変動を考えると、コロナは最後の危機ではなく、恐らく最悪の事態でもない。気候変動は私たちに、いままでと全く違う生活を長期的に強いる。そのときに、地球環境破壊と経済格差を同時に見直さなくてはいけない。行き過ぎた新自由主義、グローバル資本主義を是正し、もっと平等で持続可能な社会をつくっていこうという流れが出てきている」
斎藤幸平准教授は、2050年に脱炭素を実現するには、成長を追い求めない社会「脱成長」が必要だと提言しています。現在の資本主義の社会構造に真っ向から反しているその理由を詳しく伺っていきます。
悪夢の2年で見えた現実
――コロナ禍では国が経済を止め、給付金を配りました。
「危機的な状況になれば、大…
- 【視点】
齋藤先生の脱成長論に非常に注目しています。資本主義というパラダイムが変換しなければならないというショッキングな議論をもっと多くの人々が真剣に考えられるように、どんどんメディアで取り上げて頂きたい。しかしあまりにベーシックなところの理解が追い
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