「今の芸備線のままというわけには」 JR西支社長、早期協議求める
JR西日本岡山支社の平島道孝支社長は19日の記者会見で、赤字ローカル線のあり方に関する沿線自治体との協議について「時間的猶予のある話ではない」と述べた。芸備線について存廃を含めた協議を提起したのに続き、早期の協議を求めた。姫新線、因美線も協議の対象に位置づけた。
JR西支社長 姫新・因美線も対象に
平島支社長は「具体的にいつまでということは、相手のある話なので、設けていない」とする一方、「時間的猶予のある話だとは決して思っていない」と述べた。
芸備線の利用促進策について沿線自治体と検討してきたものの、「ひたすら利用促進を続けて結果が出るまで待ちましょう、ということにはならない。早く議論をスタートさせないと、いよいよ鉄道の運営自体が成り立たなくなってしまう」と強調。「少しでも経営的に体力のあるうちに、こういった話はさせていただきたい」と語った。
JR西側は11日の芸備線の利用促進検討会議で「前提を置かず、将来の地域公共交通の姿について速やかに議論を開始したい」との言い回しで沿線自治体に提起したが、平島支社長は「もちろん、廃線の可能性も否定しない」と踏み込んだ。「(JR西が)届け出をすれば廃止(できる)という制度にはなっているが、いきなりそういった形にはもっていきたくない」と述べた。
一方で「存続か廃止かだけが議論対象かのように受け止められているが、そうではない」とも指摘。自治体がバスやデマンドタクシーを運行させている例を挙げながら、「地域の公共交通のあり方が、将来や地域のニーズを見据えたときにどういう姿がいいのか議論しませんか、ということだ」とも語った。
「前提を置かない協議」を求めた理由については、「利用促進もやってみたが、沿線のみなさんの利用(の実態)は何ら変わらなかった。今の芸備線のままというわけにはいかない。結果は出た」と述べた。
芸備線の検討会議の場で新たな協議を打ち出したが、平島支社長は「姫新線、因美線といったところについても、同じスタンスだ」とし、この検討会議に加わっていない沿線の各自治体にも協議を求めていることを明らかにした。ただ、「利用促進を並行してやろうとなるか、これ以上は(利用促進も)難しいとなるのかは、相談させてもらう自治体次第だ」とも語った。
新見市長 強い不信感
JR西による「前提を置かない議論」の提起に、県内外の首長からは反発の声が上がっている。
「一時的なコロナ禍の赤字の補塡(ほてん)で簡単に交通ネットワークを破壊するような策は、国も望んでいる姿ではない」。新見市の戎斉(えびすひとし)市長は19日、報道陣の取材に応じ、強い不信感を示した。
新見市は芸備線、姫新線の両方の赤字区間を抱える。新たな提起に対し、戎市長は「唐突な感じは否めない」と指摘。「利用促進のために協議体ができているのに、発足して1年足らずで結論を出すのは適当ではない」と反論した。
広島県の湯崎英彦知事も17日の記者会見で「鉄道の廃止を前提にしているように聞こえる」とした上で、「利用促進について議論する会議だ。この会議で議論するべきことではない」と述べた。
国にローカル線の維持・存続を図るよう求める特別要望を採択した18日の中国地方知事会でも、鳥取県の平井伸治知事は「鉄道は学生や子ども、お年寄りらの貴重な移動手段。国が責任を持って制度設計をすべきだ」と指摘。山口県の村岡嗣政知事も「鉄道がなくなると利便性が後退し、人口減少に拍車がかかる」と強調した。
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〈JR西日本のローカル線の収支〉コロナ前の2019年度の輸送密度(1キロあたりの1日平均乗車人数)が「2千人未満」の17路線30区間について、JR西が4月に初めて公表。17~19年度平均の営業損益は全区間で赤字となり、赤字の総額は247億円に上る。
県内では芸備線の備中神代―東城、姫新線の上月―津山、津山―中国勝山、中国勝山―新見、因美線の東津山―智頭の3路線5区間が公表対象となった。広島県内の芸備線の東城―備後落合の収支率(費用に対する収入の割合)は0・4%で全区間で最低。100円を稼ぐために2万5千円の経費がかかる計算となっている。