ゲノム情報を解析し、病気の早期発見や治療につなげようとするゲノム医療。進展が期待される一方、国内では遺伝情報による差別を禁じる法整備が進んでおらず、患者側の不安はぬぐえません。どんな課題があるのか、遺伝性乳がん卵巣がん当事者会クラヴィスアルクス理事長の太宰牧子さんに聞きました。

だざい・まきこ
2011年に遺伝性がんとわかる。19年卵巣を摘出するリスク低減手術を受け、卵巣がんと診断される。ゲノム医療当事者団体連合会の代表理事。

 ゲノム医療が進めば、今は治せない病気でも診断がつき、治療法が見つかると期待を寄せています。ただ、遺伝情報は本人のものにとどまらず、家族で共有するもの。適切に扱われ、結果によって誤解や差別が生じることがないようにしなければなりません。

 私自身は、2011年に遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)がわかり、19年に卵巣や卵管を予防的に摘出するリスク低減手術をしました。「死ぬかも」と怖くて仕方なかったけれど、遺伝性とわかり、情報を集めるうちに「助かるかも」と意識が変わりました。家族とも検査の結果をも共有し、それぞれが気をつけて過ごしています。

 がんがわかったころ、仲間がほしくて患者会に行きました。「遺伝性です」というと、「かわいそうに。お子さんはいるの?」と聞かれ、「いいえ」と答えると、「よかったわね」と言われました。

差別への恐怖、今も

 遺伝性がんの当事者会をつくら…

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