芸備線「廃線前提に聞こえる」 広島県知事がJR西に不快感
大久保貴裕 戸田和敬
利用者低迷の続くJR芸備線をめぐり、JR西日本が「特定の前提を置かない議論を速やかに開始したい」との考えを示したことが波紋を呼んでいる。広島県の湯崎英彦知事は17日の記者会見で「鉄道の廃止を前提にしているように聞こえる」と反発。県内の市長からも批判が相次いだ。
JR西の提案は11日、芸備線の利用促進検討会議であった。岡山支社幹部が沿線自治体に「鉄道は地域のお役には立てていない。前提を置かず、将来の地域公共交通の姿について速やかに議論を開始したい」と持ちかけ、自治体側が「唐突だ」と対応を保留した。
「『前提を置かない議論』は鉄道の廃止を前提にしているように聞こえる」
湯崎氏は会見で「利用促進について議論する会議だ。この会議で議論するべきことではない」と述べ、JR西の提案に不快感を示した。
自治体側には「利用促進策の『採点』を行うタイミングが早すぎる」(県関係者)との思いがある。JR西は4月、庄原市内の備後落合―東城間を管内で最も採算が取れない区間として公表したが、イベントなどによって近年の観光利用は微増しているからだ。湯崎氏は「生活利用も観光利用も、効果をあげるのには一定の時間がかかる。継続的に効果を確認する必要がある」との認識を示した。
庄原市の木山耕三市長は12日の記者会見で「路線の存廃を排除しない形でのJRとの議論には応じられない」と批判。隣接する三次市の福岡誠志市長も17日、「JRが公表した収支の状況だけで存廃を判断するというのは適切ではないと感じている」と述べた。