芸備線「前提ない議論を」JR西が打診、廃線・バス転換も選択肢?
【岡山】JR西日本は11日、岡山と広島の山あいを結ぶJR芸備線について「特定の前提を置かない議論を速やかに開始したい」と沿線自治体に申し入れた。同線の一部区間は利用者低迷が深刻化している。廃線やバス転換などの可能性も含む提案で、両県では動揺や反発が広がっている。
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新見市で11日に開かれた芸備線の利用促進検討会議。約2時間の協議の最終盤、JR西岡山支社の須々木淳副支社長が沿線自治体の幹部を前に突然、切り出した。
「鉄道は地域のお役には立てていない。前提を置かず、将来の地域公共交通の姿について速やかに議論を開始したい」
須々木氏は会議後、記者団の取材に「今後の議論の進め方について問題提起をした」と説明。選択肢に廃線が入るのかとの質問に対しては「いろんな可能性を含めて、議論させて頂きたい」と踏み込んだ。
過去には広島と島根をつなぐJR三江線で、JR西が「持続可能な公共交通の実現に向けた検討」を自治体側に申し入れ、最終的に廃線となった経緯もある。このため、自治体側は「前提を置かない議論」への警戒感が強い。
「今日初めて聞いた。唐突な気がする」。JR側の提案に、岡山県の幹部は報道陣に不快感をあらわにした。新見市の幹部も、住民の利用増には時間がかかるとの認識を示した上で「我々としては利用促進を図るのが第一だ」と強調した。JR側の提案に応じるかの判断は保留し、今後は県市とも担当者レベルで協議していくという。
JR側の「布石」はあった。4月には管内の赤字路線の収支を初めて公表。全30区間のなかで、芸備線の東城(広島)―備後落合(同)間は最も採算が取れないとされ、備中神代(岡山)―東城も収支の厳しさが目立った。
この日の会議では、JR側は「課題認識として収支率の情報開示を行った。課題を共有して具体的な議論を行っていくことが重要だ」と強調。自治体側がイベントなど利用客増に向けた取り組み状況を報告したのに対し、「利用減少に歯止めはかかっていない。特に日常の生活の利用に十分に結びつけることができなかった」と指摘した。
ローカル線の見直しの動きは、コロナ禍でのJR各社の収支悪化などから全国的にも加速している。国土交通省の検討会議は4月に出した論点整理で「地域公共交通としての利便性は大きく損なわれ、将来に向けた持続性が課題」と指摘。今月10日には、JR東日本も利用者が少ないローカル線の収支状況を年内に公表する方針を明らかにした…