JR全量戻し案に難色 川勝・静岡知事、ダム案「議論を」

床並浩一 山崎琢也

 リニア中央新幹線の静岡工区をめぐり、JR東海が県外に流出する湧水(ゆうすい)を大井川に戻す二つの具体案を示したことについて、静岡県の川勝平太知事は28日、「(県が求める)『全量戻し』にはならない」と否定的な見解を述べた。着工に慎重な姿勢を改めて示した形だ。

 JR東海によると、トンネル掘削中の約10カ月間、静岡県から県境を越えて山梨県に流出する湧水を技術的に戻すことができない。JR東海は今月26日、流出した同量を量り、東京電力系の田代ダム(静岡市)の取水抑制で補う新たな案と、トンネル開通後に山梨県内で生じた湧水をポンプアップして静岡県側に戻す従来の案を示していた。

 県が求める「全量戻し」について、川勝知事は「掘削中にトンネルから水を全量戻すこと」との認識を改めて示し、流出分を補うJR案は「全量戻しについては破綻(はたん)した」と批判した。

 その上で、ダム取水抑制案については、大井川の水利権をめぐり、県や流域市町、東電側などでつくる協議会が具体的な取水量について合意していることを理由に挙げ、「驚いた。水利権はデリケートなもので、本当に乱暴な議論だ」とJR側の姿勢を批判した。

 ただ、リニア問題を担当する難波喬司副知事が「ありうる案だが、現実性は別問題」と課題を検証する姿勢を示しており、川勝知事も「東電に流している水を戻してくだされば、東電以外は喜ばれる。議論をしていただくことは全く問題ない」との認識も示した。

 一方、山梨県側の水を戻す従来案については「論外だ」と指摘。生態系や水質への影響、残土の問題などを理由に挙げ、「従来のものを繰り返されているだけ。すでに退けられている」とした。

 東京―名古屋間の2027年全線開通を求める沿線都県では、愛知県の大村秀章知事が27日の記者会見で「大いに評価する」と表明するなど、静岡県側を牽制(けんせい)する声があがっている。大井川の流域自治体でも、ダムの取水抑制案に一定の理解を示す声も出ており、東電側も議論に応じる姿勢を示している…

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