東京・明治神宮外苑地区で、スポーツ施設や高層ビルを新設する再開発が進められようとしています。開発に伴い、外苑内の1千本近い樹木が伐採される見通しです。
千代田区でも、街路樹の伐採に住民から反対の声があがっています。
樹木研究の第一人者で、日本庭園学会会長も務めた藤井英二郎・千葉大名誉教授(環境植栽学)も、こうした伐採計画には反対の立場です。環境への影響は。都市における街路樹の役割とは。詳しく聞きました。
東京を「冷やす」重要な役割
――樹木の専門家から見て、神宮外苑の樹木はどんな存在で、どのような価値があると考えていますか。
環境の面から言うと、2千本近い樹木がある外苑は東京を冷やすための重要な緑地です。
樹木の葉や枝が茂っている部分を樹冠と言いますが、まず、樹冠が連続し地面を覆うように広がっていることで直射日光を防ぐことができます。道路や建物は熱をためこんでしまいますが、樹冠が広がっていると空気を冷たい状態で維持してくれます。
木立があり、樹冠が連続して生い茂っているところは、そうでないところと比べて温度が3度くらい違う。その冷たい空気が夜間に周辺に広がり、一帯を冷やしてくれます。これこそが、都市を涼しくするための重要な要素なのです。
記事の後半では、事業者が言及している移植が可能なのかや、景観への影響についても詳しく聞きます。
ニューヨーク、パリと比べると……
――1千本近い樹木の伐採が、環境面にも影響するということですか。
そうです。
関東大震災(1923年)の前は木造の建造物が多く、道路も砂利の道でした。その後、道路はアスファルトやコンクリートで舗装され、コンクリート製の建物が急速に増えました。緑地が減り、どんどん熱をためる都市になっていきました。100年間での気温上昇をみると、ニューヨークやパリと比べても、東京は上昇が著しいのです。
樹冠被覆率という指標があります。これは、地面に対する樹冠の面積の割合を示したもので、近年、欧米の都市は樹冠被覆率を上げようとしています。
たとえばニューヨークでは…