「全量戻し」具体案をJR初提示 実現性など県注視
リニア中央新幹線の静岡工区をめぐり、JR東海は26日の静岡県の地質構造・水資源部会で、トンネル掘削に伴い県外に流出する湧水(ゆうすい)と同じ量を県内に戻す二つの具体案を示した。静岡県が求める「全量戻し」に応えた格好だが、両案とも、実現に向けた課題も多く、トンネル着工に向けたハードルは高い。
JRがこの日示したのは、掘削工事で静岡県側から山梨県側に流出する湧水量と同量をポンプでくみ上げ、静岡県側に設置する導水路トンネルを経由して大井川に戻す案(A案)と東京電力グループが水力発電用に大井川から取水する量を減らす案(B案)。国交省有識者会議が昨年12月にまとめた中間報告で、具体案を示すよう求めていた。
この日の会議では、JR側が2案を説明。トンネル湧水の県外流出期間を「10カ月間」としたうえで、解析結果から県外流出量が300万立方メートルの場合、全量戻しに必要な期間が約1年1カ月、500万立方メートルの場合、約1年9カ月とするデータを「不確定性がある」として明示したが、出席者からは「流出量が1桁多くなることもあるのでは」「1本の確定値だけで議論するのはよくない」と指摘する声があがった。
B案については東電との調整が残され、JRは「具体的なことはこれから協議したい」と理解を求めた。
また、南アルプスルートに絞られたルート選定の経過をめぐり、「不十分な検討事項があったのでは」と指摘する場面もあった。
会議後、JRの沢田尚夫執行役員は報道陣の取材に「2案を提案でき、我々としては意義があった。しっかり詰めたい」と話した。静岡県の難波喬司副知事は「案として十分にありうると思っているが、現実性があるかどうかは別問題」と慎重姿勢を崩さなかった。