ふるさとの山を桃色に染めて 「花咲かばあさん」の四半世紀

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羽賀和紀
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 今年もまた、土佐の山あいが桃色に染まり始めた。

 遅咲きの桜の名所として知られる高知県土佐町の稲叢山(いなむらやま)。高知市内から車で2時間かけて山道を登ると、標高約1100メートルのあたりでゴテンバザクラの小ぶりな花が見頃を迎えていた。訪れた夫婦が目を細める。「淡い色がきれいだね」

 今でこそ桜の名所だが、25年ほど前までは、茅(かや)と蓬(よもぎ)しか生えない荒れ果てた土地だった。

 一帯は、1982年に完成した稲村ダムの建設に使うための石切り場で、採石のため土砂ははぎ取られ、大型ダンプが地面を踏み固めた。やせた土地でも育つと言われるヒノキですら根を張れなかったという。

 町出身で県職員だった谷種子さん(88)は、荒涼とした稲叢山を目にし、心に決めた。「木を植えよう」。92年に県庁を退職し、「故郷のためになることをしたい」と考えていた。

 中学時代の同級生や友人らに声をかけ「ふるさとの森を育む会」を設立した。地権者の営林署(現・森林管理署)や四国電力と交渉し、木を植える許可を得た。桜の苗木を配る活動をしていた地元テレビ局の基金の協力もあり、98年に約500本の桜を植える準備が整った。

遅咲きの桜の名所はかつて、茅と蓬しか生えない荒れ果てた土地でした。「故郷のために」。記事後半では、谷さんの奮闘ぶりを紹介します。

簡単にはいかなかった

 しかし、簡単にはいかない…

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