第3回見過ごされた命の分岐点、真相はぐらかす報告書 記者の直撃に医師は

[PR]

 出入国在留管理庁は2021年8月10日、名古屋出入国在留管理局で収容中に死亡したスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさん(当時33)の死について、調査報告書を公表した。

 280ページに上る報告書。その中で初めて明らかになった事実の一つが、死の約3週間前である21年2月15日にウィシュマさんが尿検査を受け、病状が著しく悪化している可能性を示す結果が出ていたことだった。

 しかし、この尿検査の結果は今も宙に浮いたままで、局内ではいつ、誰が確認し、どう責任をもって対応したのかが分からない。報告書にも、結果を踏まえた追加の検査や治療は行われなかったと記されている。

 2月下旬以降、ウィシュマさんの体調はみるみる悪化していく。尿検査の結果は、命の分岐点を示していたのかもしれない。

 検査結果が見過ごされた理由について入管庁は「結果を踏まえた内科的な追加の検査等がなされることが望ましかったものの、それが行われなかった原因は、(中略)週2回・各2時間勤務の非常勤内科等医師しか確保・配置できていなかった名古屋局の医療体制の制約にあった」として、今後の改善点に位置づけている。

 出入国在留管理局の収容施設で何が起きたのか――。2021年3月、名古屋の施設でスリランカ人女性が死亡しました。入管庁、遺族、関係者への取材から、その経緯と背景に迫る6回連載の3回目は、女性の検査結果がどう共有されていたのかが焦点です。

 ウィシュマさんは尿検査の3日後の2月18日、月曜日と木曜日に2時間ずつ施設に来ていた非常勤内科医の診察を受けた。

 報告書には、診察時、施設の看護師が内科医に対して尿検査の結果を伝えた、とある一方で、内科医自身は「2月18日の診療時に尿検査結果を把握したかどうかの記憶は定かでない」と証言したと記されている。

 「医療体制の制約」によるも…

この記事は有料記事です。残り3006文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら