「ツキ」を招くウサギ、SNSでは「癒やし」で人気

岡純太郎
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 近年のペットブームで、イヌやネコが注目される中、SNSや動画投稿サイトでは癒やしを届けているとしてウサギに人気が集まっている。そんなウサギとふれあえるテーマパークが石川県南部の観光地、加賀温泉郷(加賀市)にある。

 小麦色や白色のつぶらな瞳のウサギたちが自由気ままに駆け回る。「月うさぎの里」の園内では、来園者から口々に「かわいい」との一言がもれる。

 園内には、今年で出版120周年を迎えた名作の絵本「ピーターラビット」のモデルとなった「ネザーランド・ドワーフ」をはじめ、10種類、約50羽が飼育されている。来園者はエサやりや抱っこの体験などでふれあうことができる。北陸自動車道・加賀インターチェンジから近く、アクセスの良さも人気の一つだ。

 オープンしたのは2008年。この地はもともとは漆器の専門店や美術館があり、団体観光客をターゲットにしていた。だが、運営する会社の先代社長が、他とは違う集客施設にしたいとウサギのテーマパークに一新したという。

 なぜ加賀でウサギなのか――月うさぎの里によれば、加賀地域に伝わる民話が由来になったという。

 それはこんな話だ。江戸時代、現在の県南部を治めた「大聖寺藩」に、鳥見徳兵衛という役人がいた。ある春先、徳兵衛は傷ついた1羽の白ウサギを助けた。

 その年の秋。稲の収穫前に加賀地域は未曽有の大雨に襲われ、大凶作になる可能性が出てきた。だが、徳兵衛のもとに、助けた白ウサギが現れると、大雨はいつしかやみ、夜空にはきれいな月が浮かんだ。その年は一転、大豊作に恵まれたという。以来、加賀ではウサギは「月を呼ぶ」が転じ、「ツキ(運)を招く」と親しまれているという。

 そもそも、人間とウサギの関係の歴史は古い。古代ローマでは、毛皮や食用としてウサギの家畜化が始まった。江戸時代には、人気絵師の円山応挙が絵画の題材にするなどして親しまれた。

 近年では動画投稿サイトなどでペットのウサギを投稿するのがブームだ。飼い主と遊ぶ様子を撮ったある人気チャンネルは、登録者数が29万人を超え、ある動画の再生回数は約466万回と注目を集める。

 月うさぎの里での一番の人気は、純白の毛に赤い目が特徴のニュージーランド・ホワイトの「てん」だ。普段は無邪気に広場を駆け回るが、寒い日は土産物店の入り口にあるストーブ脇で静かに暖を取る。その姿が「かわいい」と評判になり、SNSに投稿されると、たちまち数日で約1千の「いいね」がついた。

 身近な動物として人気のウサギだが、誤解も多いという。「寂しいと死ぬ」とよく言われるが、同園飼育員の松田響さん(26)は「そんなことはありません」と否定する。

 松田さんによると、ウサギは環境の変化に敏感で、かまい過ぎると逆にストレスで病気になることもあるそうだ。一方、繁殖能力が高く、カップルで飼育する際は、増えすぎに注意が必要だという。

 月うさぎの里では、そうした理由で家庭内で飼い切れなくなったり、コロナ禍でペットショップが閉店して行き場を失ったりしたウサギの里親探しも行っている。営業部長の吉野竜宏さん(54)は「ウサギたちの人間くさいしぐさや表情も魅力の一つ。ふれあいながら、ウサギのことをもっと知ってほしい」と話す。(岡純太郎)

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 〈案内〉 石川県加賀市永井町。午前9時~午後4時。年中無休。入場無料。新型コロナウイルスの感染状況により営業時間が変更されることもある。園内ではウサギにエサやり(300円)や抱っこ体験(200円)も出来る。問い合わせは同館(0761・73・8116)。

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