選択的夫婦別姓の賛成「最低」は本当? 世論調査のプロが読み解くと
選択的夫婦別姓制度に関する内閣府の世論調査で、制度を導入した方がよいと答えた人は、調査を始めた1996年以降で「最低」――。3月下旬にこんな結果が発表された。
ところが、よく見ると、今回から質問文の内容や構成が大幅に変わっている。野田聖子・男女共同参画担当相も、実態がない制度が選択肢に入っていることを指摘し、「設問がわかりにくく、無責任」と疑問の声をあげた。
こうした変更は、調査として問題がないのか。結果には影響しないのか。世論調査に詳しい埼玉大の松本正生名誉教授は、「『別姓はマイナス』と意識づけさせておいて、本題にいく流れになっている」と指摘する。一体どういうことなのか。プロの目で読み解いてもらった。
――選択的夫婦別姓制度を導入した方がよいと答えた人は28%で、調査を始めた1996年以降で最低になりました。質問文を変更した影響はあるのでしょうか?
今回、質問文や選択肢の内容をこれだけ変えているのだから、「賛成」「反対」の値が変わるのは当たり前です。
質問の仕方がどう変わったのか、まず見てみましょう。
今回、「賛成か反対か」を聞く項目は「問12」。選択肢はこうです。
①夫婦同姓制度を維持した方がよい
②夫婦同姓制度を維持した上で、旧姓の通称使用についての法制度を設けた方がよい
③選択的夫婦別姓制度を導入した方がよい
一方、前回は同じ趣旨の内容を聞くための設問「Q10」がこうなっていました。
①選択的夫婦別姓制度の導入は不要
(婚姻をする以上、夫婦は必ず同じ名字を名乗るべきであり、現在の法律を改める必要はない)
②選択的夫婦別姓制度の導入に賛成
(夫婦が婚姻前の名字を名乗ることを希望している場合には、夫婦がそれぞれ婚姻前の名字を名乗ることができるように法律を改めてもかまわない)
③選択的夫婦別姓は不要だが、旧姓の通称使用に賛成
(夫婦が婚姻前の名字を名乗ることを希望していても、夫婦は必ず同じ名字を名乗るべきだが、婚姻によって名字を改めた人が婚姻前の名字を通称としてどこでも使えるように法律を改めることについては、かまわない)
このふたつの結果を比較しても、意味はありません。
「問12」だけに注目しても意味はない
――調査を開始した1996年から、前回までは同じ質問文で尋ねていました。
同一の方法で同一の質問を聞いて、年ごとの推移を見ていく設定にしてきたにもかかわらず、今回から質問文が大きく変わっています。どういう意図と判断で変えたかがポイントです。
――国民のニーズを正確にくみとるには、質問文は変更しないのが原則なのですか。
そうですね。ただ、適切でない質問でも一度作ったら変えられないというのも不合理なので、世の中の変化に合わせて変えていかないといけない場合もある。そうした難しさは常につきまといます。
単体の質問文で比較すると、今回の問12と、前回までのQ10とでは、実はQ10のほうがわかりにくく、問題があります。質問文も選択肢も一文が長すぎて、どこに焦点があるのかよくわからず、意味がとりづらいです。
一方、世論調査というのは、調査票全体の流れで見ないといけない。今回、メディアの取り上げ方も問12だけに注目が行っていますが、この1問だけで判断しようとする使い方には無理があります。
――とすると、ほかに着目しなければいけないのは……。
前段の問10と問11が気に…
【締め切り迫る】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら
Think Gender
男女格差が主要先進国で最下位の日本。この社会で生きにくさを感じているのは、女性だけではありません。性別に関係なく平等に機会があり、だれもが「ありのままの自分」で生きられる社会をめざして。ジェンダー〈社会的・文化的に作られた性差〉について、一緒に考えませんか。[もっと見る]