県の多様性条例施行 性的指向など差別禁止

佐藤仁彦
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 人種や性別、性的指向など、あらゆる差別を禁止する条例が1日、秋田県で施行された。罰則はないが、すべての県民が個性を尊重し合って多様な価値観を受け入れ、互いに支え合う社会を目指す。これに合わせて、県と秋田市はLGBTなど性的少数者のカップルを公的に認めるパートナーシップ制度を導入した。

 県の「多様性に満ちた社会づくり基本条例」は、信条や職業、性的指向、性自認、年齢、心身の機能の障害、病歴などを理由とした差別や権利の侵害の禁止を定めた。基本理念として「すべての県民が個人として尊重され、平穏な生活を確保され、地域社会を構成する一員として、あらゆる分野の活動に参画できる権利が尊重されること」をうたう。

 同性愛性同一性障害など性的少数者の性的指向や性自認をめぐっては、2020年、性的少数者の人権を否定するような内容のビラが県内の当事者の自宅などに配られることが起きた。「生きづらさを感じてしまう人もいるのでは」という声が上がっていた。

 また、条例施行に合わせて県が1日に始めた「パートナーシップ宣誓証明制度」は、カップルの一方、または双方が、性的少数者(性的指向が必ずしも異性愛だけでない人や性自認が出生時に決められた性別と異なる人)であり、互いに人生のパートナーとして、日常生活で相互に協力し合うことを宣誓した2人に対し、その関係を婚姻に準じた関係と県が認め、公的に証明するものだ。

 住民票の写しや本人確認に必要な書類を用意して宣誓書を県に提出すれば、証明書を受け取れる。この証明書は、県や県内22市町村の公営住宅などに入居する際の手続きに使えるほか、パートナーが公立病院の入院患者となっている場合の面会手続きに使える。

 これまで性的少数者のカップルは、一方が病気やけがで入院した際、病院から「家族ではない」と面会を断られたり、一緒に住むアパートを探した際、2人の関係を告げると大家に入居を断られたりする事例があった。

 佐竹敬久知事は1日の記者会見で「地方でもそういうことで困っている方がいるので、今日からスタートできたことは良かった。これから県民に制度の趣旨や内容を知ってもらうための研修を始める」と述べた。

 県によると、この日、同制度の利用を申し込んだカップルはなかった。次世代・女性活躍支援課の担当者は「人口が同程度の他県では年間十数件の申請があり、制度の利用を望んでいる人はいるものと考えている。初日は注目されがちなので、性に関する情報を本人の同意なく暴露する『アウティング』を恐れたのかもしれない」と話す。

 今後は自治体や病院の窓口などでアウティングが起きる可能性があるとみて、職員を対象にした研修会を計画しているという。

 秋田市も1日、「パートナーシップ宣誓制度」を導入したが、申請はなかった。同市の場合は、一方、または双方が性的少数者のカップルに対し、市が「宣誓書受領証」と「証明カード」を交付する。カップルは、これらを提示することで、市営住宅の入居申し込みや市立秋田総合病院での面会、救急搬送証明書の交付手続きができる。

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