長崎・佐賀知事が会談 新幹線問題で溝は埋まらず

米田悠一郎
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 九州新幹線西九州ルートの未着工区間(新鳥栖―武雄温泉)をめぐって対立する長崎県の大石賢吾知事と佐賀県の山口祥義知事が23日、佐賀県庁で会談した。9月23日の西九州新幹線(武雄温泉―長崎)開業までちょうど半年。膠着(こうちゃく)状態の打開に向け対話を重ねる姿勢を互いに示したが、新たな提案はなく、両者の主張の溝は埋まらなかった。

 新幹線問題で両県知事の本格的な会談は3年ぶり。2日に就任した大石知事にとっては初めてになる。

 会談は当初、職員の育休を話題にするなど、和やかな雰囲気で始まった。新幹線問題は12分ほど経った時、山口知事から切り出した。両県がいったんは整備方式について合意していたことを挙げ、「長崎が国にフル規格を求め始め、豹変(ひょうへん)した」と批判した。

 その上で「(整備方式は)決め打ちではなく、話しながら決められたらいい」と述べ、対話による解決を目指す姿勢を示した。

 ただ、山口知事は会談後、「佐賀県から打開することは考えていない」と、解決案の提示責任は長崎にあるとの認識を示した。

 これに対し、大石知事は「フル規格」については言及せず、「経緯を見つめ直し、連携しながら(解決案を)模索したい」と語り、今後も佐賀県に理解と協力を求め、対話を続ける考えを強調した。

 大石知事は就任会見で「佐賀県にメリットを提示したい」と述べていたが、この日は会談後、報道陣に対し、「(佐賀県に提案する)具体的な構想はない」と話した。(米田悠一郎)

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 九州新幹線西九州ルート(博多―長崎)のうち、未着工になっている佐賀県内の新鳥栖―武雄温泉の整備方式については、長崎県と佐賀県の間で対立が続いている。これまでの経緯やそれぞれの主張を改めて整理した。

 新幹線の整備方式をめぐっては1992年、長崎県や佐賀県などが、スーパー特急の導入で合意した。2012年、時間短縮をさらに図ろうと、フリーゲージトレイン(FGT、軌間可変電車)を導入し、新鳥栖―武雄温泉は在来線の狭い軌道のままとすることを前提に、武雄温泉―長崎をフル規格で着工した。だが、FGTの開発は難航し、18年に与党検討委員会が導入を断念。宙に浮いた新鳥栖―武雄温泉をどう整備するかという問題が浮上した。

 西九州新幹線(武雄温泉―長崎)が9月に開業するが、武雄温泉で新幹線と在来線を乗り換えるリレー方式でスタートする。

 長崎県やJR九州は、残る新鳥栖―武雄温泉も、先行開通区間と同じフル規格での整備を主張している。全線フル規格になれば、乗り換えなしで博多―長崎が最速51分となり、リレー方式と比べ約30分短縮されるほか、山陽新幹線とも一本でつながるからだ。

 これに対し、佐賀県は財政負担の割に時間短縮効果が薄いなどとして、フル規格整備に反対している。今の特急でも博多―佐賀は最速35分で、全線フル規格による短縮時間は15分程度に過ぎない。また県南部の鹿島市は、新幹線開業で博多まで1時間弱の特急の本数が減ることから、新幹線整備自体に難色を示してきた。

 国は佐賀県との「幅広い協議」の場で、フル規格やミニ新幹線など五つの整備方式を示しているが、協議は膠着状態が続いている。

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