第8回「協力しなければ辞める」 たんかと熱意でこじ開けた法科大学院の扉

有料記事

編集委員・豊秀一
写真・図版

 21世紀の司法が果たす役割を明らかにするという責務を託され、司法制度改革審議会がスタートしたのは1999年夏。2年と区切られた期限で、審議会は意見書をまとめた。改革案の柱の一つが、優れた法律家を育てるための「法科大学院」構想だった。その理念をどう具現化していったのか。連載第3回は、構想の制度設計にあたった人々の思いを描く。

 ギリシャ神話の女神「テミス」は両手にてんびんと剣を持つ。司法の公正さと正義を表す象徴だ。司法制度のあり方を考える「テミスの審判」第2部のテーマは、改革の中核とされた「法科大学院」。新しい法曹養成制度として期待されながらも、曲折を経て岐路に立つ現状を、制度設計に関わった人々の証言から浮き彫りにする。

 99年7月27日、首相官邸。司法制度改革審議会の委員13人が初めて集まった。大学の研究者、法律実務家、作家、経済界や労働組合、消費者団体など各界から推薦された委員など顔ぶれは様々だった。

 13人がひとりずつ自己紹介を兼ねて抱負を一言ずつ述べた。審議会設置法には、「国民がより利用しやすい司法制度の実現、国民の司法制度への関与、法曹の在り方とその機能の充実強化その他の司法制度の改革の基盤の整備に関し必要な基本的施策について調査審議する」と記されているが、何をどう議論していくのか、共通の認識があるわけではなかった。

 しかし、会長に選ばれた京大名誉教授(憲法)の佐藤幸治(84)には、委員を引き受けたときから強い思いがあった。「法科大学院」制度の導入である。その思いをこう語る。

戦後つづいた「小さな司法」とは

 「日本の法曹界は戦後、人為…

この記事は有料記事です。残り3992文字有料会員になると続きをお読みいただけます。